遺失物課の鑑識員
記憶を取り戻すほど、何かが失われる——駅に積もる過去と、選択の重さ。
あらすじ
霧島紬は虹環駅の遺失物課で「記憶再生」を扱う鑑識員だ。左手の甲の古い痣とともに転生してきた過去を探る一方、遺失物として持ち込まれる物品の“最も大切な瞬間”を再生して持ち主へ返す仕事に従事している。駅の仲間たち──規律を重んじる課長や端末解析の葵、現場担当の凪、過去を知る鳴海らと共に、焦げた切符や封じられた写真が示す幻市と称される記憶市場の足跡を追うことになる。職務倫理と私情、再生の“代償”による記憶喪失という重い代価が、紬の判断を常に揺らし、調査はやがて駅の深部と個人の過去を結びつける。倫理的ジレンマと手がかりの積み重ね、旧構内の薄暗い雰囲気が読みどころの作品。