傷貨の聖女
痛みを貨幣に変える仕組みに、帳簿と同意で向き合う――一人の事務員が始めた記録の反撃。
あらすじ
病院の事務員として数字の裏に消えた声を数えていた榊澪は、身を呈して告発した直後に命を落とし、別の名を与えられた聖女リゼットとして目を覚ます。掌に生まれた金貨──表面に細い黒線の走る「傷貨」と、五つ目の欠けた紋章が示す不可解な繋がり。彼女は前世の職能を頼りに、治癒の同意と負担の記録を町の制度として築き、傷を貨幣化し回収する王都の仕組みに対抗していく。仲間たちと鉱山町や港町を巡り、帳簿と署名を武器に、誰の痛みが誰のものになるのかを問い直す記録の戦いが始まる。読みどころは、聖印による代償の倫理、合意と記録を巡る緊張、そして欠けた紋章が示す秘密をめぐる調査と共同体の闘いだ。