絵描き
描けば道になる。だが、すべてを描けるわけではない。
あらすじ
看板絵師のナオは、歩いた場所だけを「道」として絵にできる不思議な力を持つ。海に沈みゆく旧市街へ人を導くため、青く塗りつぶされた扉を起点に住民たちと共に路を描き始めるが、その能力には痛みと代償が伴う。想像で線を引けば記憶が失われ、ひとりの信仰では道は必ず途切れる──ナオは共同で信じる儀礼や分散記憶の技法を編み、仲間や街の人々と記憶を守ろうと奮闘する。役所の抑圧、消去装置や監視との緊張、そして「子どもの手」など残された痕跡が示す真実を巡る葛藤が物語の核心で、共同体の選択と小さな儀式の積み重ねが読みどころになる。