小さな出版社で雨宿りの常連客は恋より先に自分を許す
紙に残る痕跡が、問いを差し出す。守るか、許すか、選ぶのは私たちだ。
あらすじ
雨宮椿は小さな出版社「雨待ち舎」に勤め、活版や製本に囲まれた日々を送る。椿には、二人以上の共同作業で紙に残る微かな「痕跡」を感じ取れる特殊な感覚があり、それを頼りに仲間たちと本を作り続ける。しかしネット上の批判や流通・行政の圧力、投資家からの買収話など外部からの攻勢が強まり、出版社は存続の岐路に立たされる。椿は能力をどう用いるか、誰と手を取り合うか、自分の失われた一片と向き合うか──個人として、共同体としての選択を迫られていく。共同製本や広場での祭り、朗読会といった現場に刻まれる細やかな瞬間が、許しと守ることの間で揺れる物語。