町役場の広報課で遠距離を始めるふたりは恋より先に自分を許す
紙と手の痕跡が、遠くの声と町の決断をつなぐ。
あらすじ
町役場の広報課に配属された森川透は、新任の窓口担当として日々の業務に追われながら、遠くの街で働く相良絵里とオンラインで共同制作を続けている。二人が手を合わせて作る紙や映像には、同時に触れた者にだけ残る微かな「痕跡」が宿る――それは記録にも、記憶にも関わる特別な証だった。匿名の噂や評価システム、上層からの公式統制が町を揺るがす中、透と絵里は住民の声をどう守るか、共同制作の痕跡を公開するかをめぐって選択を迫られる。遠距離の関係と職務上の責任が交差するなかで、二人が見つけるものは、恋情より先に自分自身や他者をどう許すかという問いだ。公と私がすれ違う町の現場で、人々の手触りを取り戻そうとする試みとその緊張が読みどころになる。