神社の社務所で帰省しない社会人は別々の未来を応援する
共同で作ることが、誰の未来をつくるのかを問う。
あらすじ
葉山航は、地方の八雲神社の社務所で暮らす若い職員。彼には、二人以上が共同で作った物にだけ残る「痕跡」を読み取る力がある。年末から町では〈共同制作〉を巡るワークショップと、住民の関係性を数値化する評価制度の導入が渦を巻き、役場やスポンサー、反発する住民たちが衝突する。航は能力で人々の気持ちの痕跡を見つめつつも、その代償と、痕跡が制度や外部の評価に消されてしまう危険に悩む。仲間たちと手作業で「選び直し」の場を作る試み、展示や町会での対立、市の試行導入――目の前の制作と街の政治が交錯する中で、航は誰の未来をどう守るのか決断を迫られる。本作は、共同制作の手触りと個人の選択、制度化の圧力をめぐる人間ドラマを描く。読みどころは、手仕事の描写と夜の社務所での静かな対立、能力の代償が人間関係にもたらす緊張感だ。