屋台街でライバル店員は最後の夏を記録する
触れるほど、記憶は揺れる。
あらすじ
伊納悠は、屋台街の夜を生業にする若者。彼には「共刻感知」と呼ぶ特殊な感覚があり、二人以上で共同制作した物の表面にだけ残る、匂いや温度のような“痕跡”を感じ取ることができる。潮の匂いと提灯の明かりに満ちた屋台街を舞台に、悠は隣で働く佐久間結や仲間たちと、最後の夏をどう記録するかを巡って揺れる。外部の評札会や制度的な評価が街の暮らしを変えようとする一方で、共同制作がもたらす記憶の在り方や、他人の選択を「記録する」ことの倫理が問い直される。記憶の欠落や代償を抱えつつ、悠たちは自らの手で何を残し、誰のために示すのかを選ぼうとする──やがて街と個人の関係が決断を迫る。