名返しの迷宮
名を返すとは、答えを押し付けないこと。問いを置く教師の旅。
あらすじ
真壁透――かつて教壇に立っていた男は、異なる世界でトオル・マカベと名乗り直す。迷宮と赤い「縫い目」に覆われた城塞都市で、人々から仮名を縫い付け支配する制度と出会う。彼は名を「返す」能力を持つが、それは与える側の一方的な裁定になり得る危うさを孕んでいる。盾の女リゼット、火を操るノア、斥候の獣人ミュイ、記録者セラとともに、トオルは当事者の同意と証言を重視する証言所を立ち上げ、名返しを巡る政治と商業の圧力、迷宮の怪異や幼い意志と向き合っていく。問いを差し出す教師としての葛藤、人の名と記憶が交錯する場面描写、迷宮や赤い縫い目が示す象徴的な情景が読みどころの一つだ。物語は権力と選択の狭間で“名”の意味を問い続ける。