孵化前の和平使節
記すことは、誰かの痛みを抱くこと。言葉の代償が、和解の重さを問う。
あらすじ
久瀬透は、言葉を届かせる能力――「意図翻訳」を持つ外交官だった。しかしその力は代償を伴い、発動するたびに記憶や語彙を失っていく。戦火に引き裂かれた谷で、記録官のミナと若い雄竜ラグは、黒曜の卵を巡る取引と選択に直面する。古い碑文の原本と、三本線の印章に隠された改ざんの痕跡が明らかになるにつれ、言葉の力と歴史の書き換えが衝突する。透は「聞き手」として、失うものを覚悟しながらも言葉で痛みを抱き、敵と味方の声を繋ごうとする――記録と和解を巡る倫理と犠牲を描く物語。