砂暦の村長子と、眠れる季節の迷い路
止まった時間と欠けた季節。小さな跡継ぎが仲間と〈季節〉を取り戻す、静かな選択の物語。
あらすじ
八歳の子供の姿をした主人公は、前世で時計師だった二十九歳の記憶を抱え、村の「大砂時計」が示す季節の均衡を守る跡継ぎに選ばれる。村は季節が混ざり合う異様な境界に囲まれ、落ちた一粒の黒い砂や欠けた秋砂時計など、季節を司る「砂」が失われたり歪んだりしている。主人公は父と仲間たち――冬を纏う狩人、熱を携える旅人、春を読む巡礼者、かつての季節役人――と共に、砂を分け合い代償を負いながら季節を取り戻す旅に出る。季節の裂け目、炎のように燃える紅葉の道、氷でできた白い獣、地下の凍った庭や子ども用の椅子といった鮮烈な光景と、記憶や名前が失われるリスクを伴う儀式が物語を牽引する。読みどころは、修理と観察の比喩として織り込まれた秒針と砂の象徴、仲間と分かち合う覚悟、そして選択がもたらす個々の痛みと村全体の再生のはざまで揺れる葛藤だ。