赤道直下の氷配達

赤道直下の氷配達 第8話「第6章:大病院の危機」

大病院「セントラル・メディカル・ハブ」は、巨大なドーム状の要塞のような姿をしていた。しかし、今のその姿は、内部からの明かりが消え、不気味な沈黙に包まれている。 ナオはアイラ医師との無線を繋ごうとした。 「アイラ先生! こちらスノウ・ホワイト号、聞こえますか!」 『……ナオ……さん……? ああ、よかった……!』 アイラの声は震えていた。背景からは、医療機器のアラーム音と、必死に指示を飛ばす看護師たちの怒号が聞こえる。 『予備電源が完全に沈黙しました。ICUの温度が三十八度を超えています。未熟児たちの保育器が……このままじゃ、あと三十分持たない』 「今、第四セクションの手前まで来ています。でも、回

大病院「セントラル・メディカル・ハブ」は、巨大なドーム状の要塞のような姿をしていた。しかし、今のその姿は、内部からの明かりが消え、不気味な沈黙に包まれている。
 ナオはアイラ医師との無線を繋ごうとした。
「アイラ先生! こちらスノウ・ホワイト号、聞こえますか!」
『……ナオ……さん……? ああ、よかった……!』
 アイラの声は震えていた。背景からは、医療機器のアラーム音と、必死に指示を飛ばす看護師たちの怒号が聞こえる。
『予備電源が完全に沈黙しました。ICUの温度が三十八度を超えています。未熟児たちの保育器が……このままじゃ、あと三十分持たない』
「今、第四セクションの手前まで来ています。でも、回廊が閉じていて……」
『そこを突破しないと間に合わないわ! でも、どうやって? あそこは手動では開かない設計なのよ!』
 ナオは前方を見据えた。巨大な鋼鉄のゲートが、ハイウェイを完全に遮断している。太陽嵐の影響で電子ロックが噛み込み、物理的な破壊も不可能な厚さだ。
 周囲を見渡すと、そこにはナオと同じように立ち往生している貨物車たちがいた。自動運転が止まり、判断力を失った無人車両や、途方に暮れる数人のドライバーたち。
「みんな、聞いてくれ!」
 ナオはアナログ無線の出力を最大にした。
「俺はスノウ・ホワイト号のナオだ! 今、大病院で子供たちが死にかけている。このゲートを開ける方法はないが、越える方法ならあるかもしれない!」
 ノイズ混じりの無線に応答があった。
『……越えるって、どうやって? ここは断崖絶壁だぞ』
『無茶言うな。俺たちの車には氷しか積んでないんだ』
「そう、氷だ!」
 ナオは叫んだ。
「父が言ったんだ。『道がないなら、氷で埋めろ』って。この崩落した谷を、俺たちの積んでいる氷で埋めて、橋を作るんだ!」