忘却王国のノア
記憶が映すのは過去か、それとも選ばれなかった未来か。
あらすじ
回帰雨が記憶の断片を街に映す王都。ノアはかつて記憶を保存する装置を設計した技師だが、前世の名や最期の景が欠けた「空殻」として扱われる十六歳の少年でもある。装置は選ばれなかった可能性を合成し、選択の意味を薄めていく――その倫理に気づいたノアは、自らの発明と国家の運用の狭間で揺れる。護衛リゼ、道具を携えたトト、命令に従うカイ、そして制度を動かす者ヴァルドらが交錯する中で、法廷での審問や記憶晶の検証が明らかにするのは、記憶と解釈の層だった。白い地図や中枢炉、回帰雨という象徴が重なり合う物語は、失われた過去とこれからの選択をめぐる葛藤と、記憶をめぐる共同の決意を描く。彼らはまだ答えを持たないまま、白い地図に何を描くかを自ら選ぼうとする。