異世界転生紙漉師の勇者
降る記憶を漉き、語りを守る。選択が町の未来を決める。
あらすじ
スズは「雲紙」と呼ばれる、空から降る記憶の紙片を漉き直して人々が安全に読める形にする村の漉き師。だが彼女の力には制約があり、本人が自ら手放したものだけを扱える――さもなければ自分の名が紙から薄れてしまう代償がある。王立市場から記憶を買い上げ商品化しようとする圧力が村に迫る中、スズは読み会を開き、住民たちと対話を重ねながら記憶を守る道を探る。やがて市場の帳簿に改竄の痕跡が見つかり、村と市場の対決は公の場へと移る。個人の過去を売るか語るかという選択が共同体の在り方を問うなか、スズは働き手として、そして守り手としてどのように関わるかを選び続ける。物語は、記憶と共同体の価値をめぐる葛藤と、その先に生まれる小さな拠り所を描く。