異世界転生税関吏の迷宮攻略者

異世界転生税関吏の迷宮攻略者 第23話「第21章」

日差しが舗石を白く洗い流す広場で、ダンは二つの欲望を同時に抱えていた。ひとつは、この場にいるすべての人に「出口税の正体」を知らしめること。もうひとつは、できるだけ多くの命を守ること──嘘の代償を知る者として、自分がその場で誰かを犠牲にするわけにはいかなかった。

日差しが舗石を白く洗い流す広場で、ダンは二つの欲望を同時に抱えていた。ひとつは、この場にいるすべての人に「出口税の正体」を知らしめること。もうひとつは、できるだけ多くの命を守ること──嘘の代償を知る者として、自分がその場で誰かを犠牲にするわけにはいかなかった。

「まずは、記録を出せ。誰がどの鞄を、どの申告で通したのか。住民にも見せるんだ」

ダンが祭壇のように据えられた台に手を置くと、隣に立っていたリサが小さな声で答えた。「一覧はここにあります。けれど、幾つかの書類は……消されているはずです。名前の欄が白い紙で張り替えられていたものが何枚か」

リサは彼の仲間だ。公文書を扱う若い書記で、数字と文字の裏にある人の顔を見据える目をしている。彼女はただの随伴者ではない。自分の兄を迷宮に奪われた経験があるから、記録の回復を望んでいる。ダンはその胸に、守るべき対象としての共同体の重さを感じていた。港の漁師、行商人、迷宮に入ったまま戻らぬ者の家族──今日ここに立つ人々の命が、彼の手の内で揺れていた。

「準備はいいか、トマス?」とダンは隣の男に訊ねる。トマスは元探索者で、荒い顔に深い皺が刻まれている。彼は利害で動く男ではなかった。迷宮の内側を知る一人として、事実だけを語るために来ている。トマスは短くうなずき、鞄から一束の紙片を取り出した。それは迷宮から持ち帰ったメモの切れ端だ。紙の縁が石のように硬く、部分的に白い粉が吹いている。

「ここで黙っているのはもう終わりにしよう」とダンは言った。声は広場の隅々へ届く。彼の周囲には民衆が集まり、正面には迷宮伯を示す黒い旗を掲げた一行が控えている。迷宮伯の側近たちは、薄く笑っていた。彼らの笑みは、どうしても合理性と秩序を語る者の自信を映す。だがダンは知っている。笑みの裏にあるのは便利な制度の残酷な歪みだ。

「我が領の安寧を守るために出口税は不可欠だ」と、やがて中央から低く響く声がした。迷宮伯自身だった。彼は背を小さく包むような装束を纏っており、視線は広場を冷静に掃いた。「迷宮は危険である。無秩序な出入りは国を危うくする。税は防衛──道具の査収と管理のためだ」

彼の隣の長衣の男が一枚の札を掲げる。白地に空白の楕円がひとつ。空の通行札――誰もが知るものだが、今日ほど不穏に見えることはなかった。札は明らかに空だった。だが、それがどうして人の希望を奪うのかを、まだ多くは理解していなかった。

迷宮伯は言葉を続けた。「税を免れようとする者、あるいは何かを秘匿しようとする者には、法の措置がある。嘘を申告した場合、荷物は迷宮の自然の力で石と化す。申告と実物が異なれば、その代償は厳正だ。これはみなさんの安全のためだ」

拍手が起きる。側近たちの掌が、民衆の一部の掌を誘導している。だがダンの目は、混じった拍手の中に張りついた恐怖を見ていた。拍手はしばしば従属を装う。不正はそれでもなお、声の大きさで覆い隠される。

ダンはゆっくりと手を上げた。群衆は静かになる。盤上に置いた石になった鞄を、彼は台の上に置いた。鞄の革は白銀の粉をまとい、縫い目の一部が黒く変色している。鞄は軽くも重くもない見た目だが、その表面には押された「出口印」の痕が、はっきりと残っていた。通常の出口印とは違う、どこか歪んだ形だ。その歪みが、ダンには迷宮伯の手のものだと告げていた。

「これは嘘の代償のひとつだ」とダンは言った。「この鞄は、ある母親が命税の支払いを免れるため、通関で『乾いた衣類のみ』と申告したものです。だが実際には、彼女の息子に渡すはずだった手拭いと、祖母の小さな十字架が入っていた。申告が違ったため、鞄は石と化した。だが問題はそれだけではない。その鞄に押された出口印は、彼女が記憶していた場所に刻まれたはずの帰還の印を消している。それを持つ者は、帰る場所を失ったのです」

ざわめきが波のように広がる。誰かが「嘘でしょ」とささやいた。誰かが目をそらした。迷宮伯の側近が鼻を鳴らし、挑戦的な声を放った。「であれば、そのような嘘を騙る者がいたのだろう。それは法に従うべきだ。だが『出口印が消す記憶』などというのは迷信だ」

迷宮伯本人がゆっくり前に出た。その目は堅かった。「ダンよ、人民の不安を煽って、混乱を生むつもりか。事実を示せ。それができるなら、君の言を受け止めよう」

ダンは息を深く吸い込み、向かいの群衆へと視線を走らせた。彼の仲間たちが前へ進む。トマスは紙片の束を広げ、裏に刻まれた文字を示す。リサは明細書を持ち上げ、白く剥がされている名前欄を指差す。ミリという漁師の老婆は、震える手で小さな木の札を取り出した。その札には、空の通行札と同じく、何も刻まれていなかった。だがその木札は、老婆の胸の内で何かを意味していた。彼女はその札を握りしめながら、涙で声を詰まらせた。

そこへ、迷宮伯の若い側近がニヤリと笑って言った。「証拠、ですか。では、ここで迷信を一つ壊してやろう。OSTの名にかけて──」彼は近づき、台の上にあった小袋を自信満々に掲げた。「この袋は空だと申告します。さあ、見せてみろ、嘘であることを」

その言葉は挑発だった。側近は民衆の嘲笑を誘いたかったのだ。彼は袋の中に誇らしげに指を突っ込み、軽く持ち上げると見せつける。民衆は彼の勇ましさに反応してどっと笑った。迷宮伯も軽く微笑んだ。彼らはダンを、場の興奮を鎮める愚か者か狂信者だと見做していた。

ダンは静かに見ていた。静けさがやがて重苦しい空気を呼び、側近の顔は一瞬めまいを見せた。だが、その表情の変化を誰もが予期できなかった。側近が袋を振ると、中から鈍い音がした。鈍色の光が袋の布を透かし、金属のような鳴りが生じた。側近は慌てて袋を落とし、その場に跪いた。

「あっ……!」誰かが叫んだ。袋は軽いはずだったはずのものが、手の端が欠けるほどの重さで地面に転がっている。布はそのままだが、中身は石になっていた。側近の白い手には、無垢に見えた指輪が嵌っていた。彼が慌てて指を見ると、指輪はずっしりと重くなり、皮膚が押し潰されるように沈んでいた。彼は指を引こうとするが、指輪はまるで指をつかんだまま、抜けそうにない──重要な物の「重さ」が、そのまま現れていたのだ。

広場は沈黙した。誰もがその変化の意味を理解していた。嘘の申告が、荷物を石に変え、嘘をついた者の大切なものを同じ重さにする。しかし今、これが公の場で起きた。側近の誇り高き態度は粉々に砕かれ、彼の手は血に近いほどに膨れ上がって見えた。

迷宮伯の顔色は変わった。彼は素早く側近の腕を掴み上げ、無理やり体を支えた。「これは、私の命令ではない」と彼は言った。だがその言葉は、群衆の怒りを抑えるには遅すぎた。民衆は、今や自分の目で見た現実の前に動揺し、周囲から悲鳴が聞こえる。石にされた袋の側に、ダンはゆっくり歩み寄った。

「あなた方は知らぬうちに、最も弱い者に選択を強いてきた」とダンは声を張った。「徴税と言えば聞こえはいい。だが多くは、選択の余地を奪うための脅しだった。『申告しろ。さもなくば罰を受けよ』と。嘘をつかざるを得ない状況に追い込むのは何か? それは恐怖だ。そしてその恐怖を利用して、出口印を押し、記録を消