異世界転生税関吏の迷宮攻略者

異世界転生税関吏の迷宮攻略者 第22話「第20章」

広場の石段に並べられた長机の上で、石になった箱が低いうなりを立てるように冷たく光っていた。荷札の文字は半分が擦れていて、残る文字からは「食糧十箱」と読める。箱に張られた麻紐は切られておらず、中身がどうなっているかを確かめようもない。人々のざわめきが波のように広がり、兵士の甲高い声と叫びが混じり合う。

広場の石段に並べられた長机の上で、石になった箱が低いうなりを立てるように冷たく光っていた。荷札の文字は半分が擦れていて、残る文字からは「食糧十箱」と読める。箱に張られた麻紐は切られておらず、中身がどうなっているかを確かめようもない。人々のざわめきが波のように広がり、兵士の甲高い声と叫びが混じり合う。

「まず、確かめる。ここにいる者すべての申告を、公の前に出してもらう。嘘があれば、その結果はこの場で明らかにする」

ダンは立ち上がり、手元の通関帳に浅く指を置いた。葡萄の木で作ったように小さく光る紋章が、夏の陽を受けて鈍く反射する。隣ではマーエンが険しい顔で腕を組み、リサが書記台に体を寄せて筆を握っている。ガロは膝を折って人混みを睨むようにしていた。誰もがダンの方を見ている。彼らを守るのは――ここにいる全員だ。ダンは自分の意図を言葉にする前に、まず仲間の顔を確かめた。

「僕は、信用を取り戻したい。公開の場で、証拠と証言を出す。嘘は嘘として示されなければ、再び誰かの命が税に消えるだけだ」

「そこにまた、財布を使う者がいるなら――」マーエンが差し出した小さな袋をちらりと見て、低く付け加える。「金で誤魔化した公正ほど脆いものはないわよ」

誰もが知っている。嘘の申告は荷物を石に変える。変わった荷物の重さに合わせて、嘘をついた者の愛用の品が石と化す。変えられたものは、元には戻らない。石になった箱が示すのは、単なる物理的損失ではない。信頼の欠片が鉱物と化してしまったということだ。ダンはその重さを掌で感じ、胸の奥が冷たく縮むのを押し込んだ。

最初の申告者はアルノという名の小商人だった。アルノは震える手で布袋を差し出し、声を震わせながら言った。「羊の糸、十束、迷宮用に──正直に申告します、ダン様。出口での仕事に必要なのは本当です。妻が子を縫うのに、それが必要なのです!」

ダンは書記に合図して、リサにその言葉を書き取らせる。アルノの目は真っ直ぐで、嘘をつく余地がないように見えた。ダンは小さく息を吐き、能力を起動する。彼の掌が通関帳の上を撫でると、古い港の通関士としての感覚が戻ってくる。申告された荷物に限り、その持ち主が本当に必要とする道具を一つだけ迷宮内へ通せる。制度に立ち入ることはできないが、申告の真偽は、ここで露わになる。もし偽りがあれば、その荷物は石と化す。嘘をついた者の手元にある大事な物も、同じ重さで石に変わる。

アルノの布袋は淡い光を帯び、乾いた風が吹いたように糸がひとつ、ふたつと息をする。糸束はそのままの姿で、通関の合図を受けて詠唱のように宙を滑り、見えぬ扉に吸い込まれていった。歓声は出ず、ただほっとした吐息が場内に満ちる。アルノは膝をつき、手を胸に押し当てた。彼の必要は真実であり、通関は救いになった。

だがそれと同時に、別の一角で騒ぎが起き始めた。大柄の男が机を叩き、声を震わせていた。商人カレストだ。彼の周りには黒い服の影が幾つか立ち、平民もいれば委任を示す札を掲げた者もいた。ダンは視線をそちらに向けた。カレストの箱には立派な葡萄酒の籠が入っている。箱には「研磨用器具」と申告の札があり、重そうな金具が見え隠れしていた。

「それは──」マーエンがすぐに反応した。「どういうつもりだ。さっきの審査で器具が必要だと言ったのか?」

カレストの唇がゆがむ。彼は笑みを張り付かせて言った。「この世の中で何が本当に必要かは、人それぞれだろう。器具を持ち込めば、より効率的に迷宮に働きかけられる。申告は正しい」

ダンはカレストの目を見る。そこには恥じらいもなく、下に見下す光があった。証人に名乗り出たのは、昔から迷宮伯と近いと噂された顔ぶれだ。ダンは内心で警戒を固めた。ここで強行すれば、すでに浸食されている秩序をさらに刺激する。だが目の前には証拠がある。最近続いた石化事件の多くが、同じ商人連の周辺から出ている。嘘を許せば、また誰かが一箱の食物と引き替えに命を差し出さされる。

「公開の審理を開始する」とダンは言った。彼は自分の言葉に嘘がないことを示すため、申告の束を広げて見せた。「この場で申告し、証言し、偽りがあればその結果を受け入れる。私は中立だ。通すか通さないかはこの場の合議で決まる。しかし嘘は、ここで形になる」

カレストは嘲るように肩をすくめた。「さあ、見せてみろ。誰もが自分の宝を持っている。嘘を指摘して、誰が失うか見てやる」

最初の試みをしたのは、カレスト側の従者だった。従者は小さな木箱を抱え、汗を拭きながら「補助具」と言い張った。箱の中身は粉末状の香料と見られる小袋だった。リサが書き留め、マーエンが疑念を表す。

「これが本当に迷宮で必要なものだと、どう証明する?」マーエンが問うと、従者は口ごもりながらも「器具の保全に使う」と繰り返す。ダンは深呼吸して箱に手を触れた。能力は微かに応え、箱がじんわりと冷たく光り始める。場内の視線が一点に集まった時、箱の表面がひび割れ、内部の小袋が重々しい鉱質に変わった。木箱全体が一瞬で石灰色になって、床に鈍い音を立てて落ちる。

「箱が――石に!」誰かが叫んだ。従者は膝を折り、手で胸を掴んで呻いた。その表情は恐怖だった。だが石化は、箱だけに留まらなかった。従者の首に下がった小さな銀のペンダントが、箱と同じ重さに引きずられるようにして変質し、冷たい硬質へと変わる。従者がそのペンダントを撫でる指が震え、掌の中に冷たさを感じた。

「私の――これは嘘じゃない!」従者は叫び、口から意味のない言葉を吐き散らした。だが周囲は静かになっていた。石になった物を前に、嘘と真実の線引きが一度で示されてしまったからだ。ダンはその従者の顔を見つめ、言葉を選んだ。

「嘘とは、自分が必要だと申告したものが本当に必要でないと、能力が判断した時に現れる形だ。君はその判断を受けた。だが君が今失った物は、君が大事にしていたものだろう。謝罪するなら、ここで事実を述べ直せばよい」

従者は震えながら頭を垂れ、事の次第を吐き出した。箱の中身は出口に回すための粉ではなく、貴族への贈答品だった。カレストは表情を即座に変え、傍らで不満を露わにしたが、場内の空気は既に変わっていた。嘘が形を取る瞬間、人々の信頼はさらに脆くなり、怒りが広がる。

その怒りは、次の事件へとつながった。市場の端で待っていた母親が、小さな籠を差し出して叫んだ。籠の中にはパンが三つ入っている。彼女の名はアニェー。子どもは風邪をひいていた。彼女は申告した。「薬と食料。病に倒れた子に必要です」

ダンはすぐに承認の手続きを取ろうとした。だが前の石化で人々の目は険しくなっている。カレストの手下と見られる人物がその場に近づき、アニェーの籠を指さして声を上げた。「それは偽りだ! 薬じゃない。パンだ! 申告は偽装だ!」

その叫びが、誰かの不安を刺激した。隣にいた男が「嘘は嘘だ」と叫ぶ。人々の視線が一斉にアニェーへ、とがめるように注がれる。ダンは迷った。子どもの顔が頭に浮かぶ。アニェーの手は震え、唇はかすかに青い。だが能力のルールは厳然としている。嘘は身の回りのものを石に変え、人の大事を奪う。もし申告が偽りなら、この籠も、そしてアニェーの