こども王

こども王 第22話「第20章」

「ここで、これを証拠として提出します」

「ここで、これを証拠として提出します」

リクは絵布にかかった重い布を指先で弾いた。法廷の空気がいっせいに詰まり、息を吐く音さえ遠く聞こえた。布が滑り落ちると、額縁の中で少年の顔がこちらを見返していた。これまでも幾度か人前に出した肖像より、少しだけ落ち着いている。頬に刻まれた線が、わずかに深くなっていた。

「リク殿の肖像画」と裁判長が声を落とし、傍聴席から低いざわめきが起きる。リクの隣には、教師のミーナが立っていた。手には小さなノートがある。その隣には城下学校の子ども代表、ハナがしっかりと立っていた。彼女の眼差しは揺らがない。リクの後ろには、法の専門家として名を馳せるマルセラ議員が控え、書類を積んだ机の前で腰を落ち着けていた。

「今したいこと」は明確だった。法廷にいる大人たちの良心を揺さぶり、徴募の恒久化に歯止めをかけること。だが妨げもある。宰相グレイの弁護士は既に証拠を否定し、偽造の可能性を執拗に唱えている。法廷の外ではグレイの支持者が紙片を配り、メディアは嘲りの見出しを垂れ流す。守る対象はここにいる子どもたちと、学区全体の未来だ。仲間たち――教師や弁護士、子ども自身――は、それぞれの位置で自分の言葉を持っていた。

「これが何かのトリックだと言うのなら、言わせてください」ミーナが静かに言った。細い指でノートを押さえる音がした。「子どもたちの筆跡です。自分で書いたと、彼らははっきり証言しています。リク王子の力に頼らない方法で集められた証言です」

法廷では、言葉は証拠と同列に並べられた。誰かが言ってしまえば、それが真実になりやすい。リクはその危うさを知っていたからこそ、今日ここに来た。自分の能力を使うことは、選択肢では最後の最後の非常手段だ。能力の条件は誰もが知っている——自分より年下の者が自らの意思で願ったことだけが、一日限りの王令として現れる。願いを誘導すれば暴走する。使うたび、自分の年齢が一日だけ進む。リクはそれを、法廷で説明する必要があるとも思っていたが、まずは肖像画を見せることが、より強い言葉になると踏んだ。

「では、弁護側の反論を受け付けます」裁判長が書面をめくる。グレイ側の代理人、カロスが立ち上がる。彼の瞳は冷たく、法廷の光をはね返すようだった。

「この絵は加工の疑いが濃厚です。筆致の変化、描かれた日付、額縁の後付け痕跡――どれをとっても、外部での改竄が考えられる。さらに、そもそも『一日ずつ進む肖像画』という概念自体が魔術的な説明に基づく。そんなものは法廷の証拠にはなり得ない」

「魔術的であろうと、ここにあるのは現実の変化です」マルセラが立ち、判事席に向かって肩越しに話した。「筆跡の一致、子どもたちの宣誓、公的な年齢登録の記録。これらを無視して主張することは、議論の逃避です」

カロスが冷笑した。「では、年齢登録の改ざんを示す証拠はあるか?」

法廷内の空気は、一瞬で針を巻き戻したように凍りつく。年齢登録の健全さは国の信頼の根幹だ。そこに疑いを差し挟むのは、政治的に致命的だった。リクの胸がざわついた。彼は口を開く前に、周りを見た。ハナはわずかに首を傾け、ミーナはうなずいた。子どもたちの眼差しが、何かの決断を求めていることが伝わってくる。

「私が、ここで話します」リクは声を絞り出した。普段の明るい調子ではない。言葉は平坦で、それがかえって重く響いた。「この肖像画は、私が何度か使った王令の痕跡を残すものです。使うたびに、私の年齢は一日だけ進みました。それは私だけの秘密ではありません。子どもたちに選ばれた願いを、私は実現しました。代わりに私の歳が一日ずつ減ったのです」

誰かが「なぜ?」と小さく漏らした。リクは続きを遮らず話す。

「私は、それを見せようと思います。私が何を犠牲にしてきたか、裁判所の皆様に示します。私が年を取ったことを、証拠としてここに置きます。もしそれでも、この国が子どもを守る責任を放棄するなら、それは皆さん自身が選んだことです」

カメラのシャッター音が屋根裏のように散発的に聞こえた。カロスが鼻で笑った。「そんな見せ物に国政を託すなど、滑稽です。少しくらいの感情で判決が左右されるなら、法などいらない」

だが、誰もが見落としていたことがある。リクが「見せる」と決めた瞬間、ただの物証ではなく、共同体の記憶を呼び覚ます器になるということだ。肖像画が単に年老いた王子を描いているだけなら、偽造だと弾かれたかもしれない。だがその絵には子どもの字で書かれたメモが額の裏に封じられてきた。今日、それが表に回される。

ミーナがそっとノートを開いた。ページにはハナをはじめとする子どもの字で短い一文が並んでいる。「僕は兵役に行きたくない」「私は勉強を続けたい」——筆跡はまちまちだが、どれも自分の意思で書かれたと誓えるものだった。ミーナはそのノートを裁判長に差し出した。「これらは、リク王子の力を用いずに集められた声です。子どもたちが、自分で自分の願いを文字にしました」

ハナが前に出た。小さな体に似合わぬ大人びた声で、彼女は自分の手紙を読み上げる。「私は大人になってから、戦争を決める人が誰かを見たいです。大人が責任を取るなら、私は怖くない。自分の字で書いたのは、私は自分の未来を選びたかったからです」

その言葉が法廷の中を突き抜けた。カロスの言葉はそこで途切れ、動揺が顔に走る。数人の傍聴人の目に涙が光った。リクは自分がこの場で光るべきだとは思っていない。しかし彼は、己の肖像を掲げることで、子どもたちの声がただの情緒的訴えではないことを示したかった。年齢の進行は、彼が払った代価の物理的証拠でもある。年を一日進めるたびに、彼は子どもたちの選択を一つだけ実現してきた。それは彼個人の献身であり、同時に、大人が肩代わりすべき責務の代替でもあった。

カロスは最後の策を取り出した。偽造の説得を強め、肖像画を専門家に調べさせるべきだと要求した。留保して検査に回せば、判決は先延ばしになる。だが検査は時間を稼ぐだけで、グレイの勢力にはその猶予が与えられる。リクはそれを恐れた。

「裁判長」マルセラが前に出る。「もしこの肖像が偽造であれば、その旨をきちんと検査で示してください。しかし、検査が終わるまでの間、徴募の差し止めを仮処分として出すべきです。事実が明らかになるまで、子どもたちを危険に晒すわけにはいきません」

言葉は理路整然としていた。だが、理路と人心とは別のものだ。予想外の声が法廷に響いた。年配の商人が立ち上がり、小さな手を胸に当てる。「私は、今日この絵を見て初めて、何が起こっているのか分かりました。若い王子が己を削ってまで子どもを守った――その重みを、一人の商人として受け止めます。責任は、私たち大人が取るべきです」

その言葉が連鎖を生んだ。教師たち、職人、隣町の女性――一人また一人と、リクの肖像に向かって視線を送る。マルセラの提案は、次第に人数の賛同を得る。カロスは焦った。彼の側についた判事も一人、二人と減っていく。だがグレイの影はまだ深い。カロスは最後に、露骨な脅しを口にする。

「感情に流された判断は国家を滅ぼします。もしここで徴募を止めれば、敵対勢力は攻勢に出ます。責任