温泉番
湯が映す青い筋が、黙された声を呼び戻す。
あらすじ
古い湯屋を営むハルは、湯に浸かって自らの痛みを語った者の苦しみが、湯面に青い筋として現れる不思議な力を持つ。鉱山で働く者たちは病を抱えながらも「黙ること」を強いられ、記録帳には消えた名が残る。ハルは湯治場を拠点に、語らせる場を作り、客帳と証拠を集めて役人の“検査”や移送に抗おうとする。王都の医監に繋がる指輪や封鎖された水路といった物的証拠も見つかり、共同体は組合を結成して守りを固めていく。だが彼の力には代償があり、痛みを引き受ける選択や、誰が声を上げるかという葛藤が繰り返される。湯気と青い筋の示す“見えない苦しみ”をめぐる、人びとの記録と連帯の物語。