聖歌隊
声を奪う力に抗うのは、まず耳を澄ますこと。
あらすじ
ハルは転生して王都の孤児院で指揮係を務めることになった。舞台監督としての癖を抱えつつも、彼が守ろうとするのは十二人の子どもたちと言葉を失った少女メイ、路地の小商人たちだ。本作の魔法は「声」を結界に変えるが、その成立には三つの約束がある――互いに聞くこと、誰かを突出させないこと、無理に歌わせないこと。対するはネロの名を背負う教会側の監視者たちで、声を「揃える」ことで秩序を作ろうとする力が街に迫る。ハルと仲間たちは録音器や町を巡る対話で同意を紡ぎ、聞き合うことでしか生まれない防御を築こうとする。過去の失敗と代償、十三番目の休符という象徴が示す「沈黙」の意味をめぐる葛藤と、声をめぐる市民との対話が物語の核だ。静かな合意作りと、強制に抗う緊張が読みどころになる。