夢を税にする司祭は愛した人を裁く

夢を税にする司祭は愛した人を裁く 第24話「第22章」

蝋燭の炎が長い影を床に引く。証の間 — かつては聖歌隊の練習場だったこの広間は、今は王府と教会と軍が共有する公的なる舞台になっていた。石壁に刻まれた古い歌詞の断片が、訴えと反訴の言葉で埋められている。空気は蜜と鉄の匂いが混ざり、遠くで締め上げられた歯車の低い唸りが響いていた。

蝋燭の炎が長い影を床に引く。証の間 — かつては聖歌隊の練習場だったこの広間は、今は王府と教会と軍が共有する公的なる舞台になっていた。石壁に刻まれた古い歌詞の断片が、訴えと反訴の言葉で埋められている。空気は蜜と鉄の匂いが混ざり、遠くで締め上げられた歯車の低い唸りが響いていた。

カイルは長い祭服の裾をひきずり、壇上に立つ。彼の手には銀の懐中箱がある。蓋の縁には小さな髪の房を閉じ込めた古いロケットが嵌められている。箱は彼の肺のように重く、箱の中身にはかつての記憶の欠片が詰まっていると彼は言ったことがある。しかし今、その箱の重みはただ冷たい金属の冷たさだけを伝えていた。

「証を示せ」呼び出しの声は、法の役人でもあり、税務官でもある中尉のものだ。彼の背後には、夢徴税の布告を掲げた兵士たちが整列している。絹で目隠しされた徴税者の列がゆっくり進み、ひとりの女性が壇上に差し出された。肩には枯草色の布が掛けられ、瞼に縫い付けられた小さな針の跡が光る。夢を税として徴収された者の身体は、徴収の際の器具で刻まれた瘢痕を残すのだ。

ミラがカイルの耳元で囁く。「やめて。今回は特に――あなたの手でやらないで」

ミラの目は燃えるように赤い。彼女は夢に触れることができる者で、カイルとは違う形で夢を扱う。彼女は仲間であるだけでなく、時に行動の裏取りをする独立した意思そのものだ。今、彼女は壇上の女性を見やり、固い表情で拳を握った。だが彼女は自らの決断で動く。彼女はカイルの手を強引に引いたりはしない。判断は一人ひとりに任されている。

「彼女の証言を」カイルは低く言った。声は教会の石の反響を纏いながらも、震えを押し隠している。壇上の女性は微かに震え、唇を噛む。まぶたの下で夢の残像がちらつき、金色の光点が彼女の周囲で揺れた。徴税の術式は「見た」ものを強制的に金銭化する。カイルの力は、そのばらばらの「見た」を一まとまりの証言として織り上げることができる。だが――

彼が証を束ねるために指先を女性のこめかみに触れたとたん、何かが彼の胸の中で弾けた。暖かいものが抜け落ちる感触。ロケットが彼の手で滑り、蓋が一瞬だけ開いて髪の房が風に揺れた。その髪が誰のものかを、カイルの意識は探したが、名前はすり抜けた。彼は焦りを抑え、深呼吸をする。息の上がり方が少しだけ違った。彼は「記憶が薄れる」と口にする以前に、もう一つの代償を感じている——その銀い髪房の色が、脳裏から退色していくような。

最初の証言は、薄荷を噛んだような冷たい夢だった。女性は夜の市場で金貨を数え、その箱の中の夢を抜かれた瞬間、泣き崩れた。カイルはそれを織り上げる。言葉が出て、法廷に突き刺さる。徴税の正当性が揺らぎ、兵士の視線がめまいのように泳ぐ。陳述が終わると、カイルの心の片隅から、彼女と差し向かいに座って笑い合った街角の光景が消えた。彼は一瞬、誰と笑ったのかを思い出せない。口の中には甘さの痕跡がある。ロケットを指先で押さえると、冷えた金属が微かな振動を返した。

「覚えてる?」ミラが問いかける。問いかけの先には誰の名もない。カイルは首を振る。彼女の問いは彼の心の奥の灯りを覗き込んだ。そこには断片があった——声色、手の感触、香りの一端。しかしまとまった一つのものとしての像は欠けている。

場内のざわめきがひとしきり起きる。傍聴席の中には徴税によって家族を失った者たちがうめき、徴税を支持する貴族や聖職者は眉をひそめる。だがカイルがもう一つの証言を求める、そのとき──

壇下の扉が乱暴に開き、ハルトが血の匂いをまとって入ってきた。彼は軍人であり、かつてカイルの庇護を受けた者だ。片方の腕には深い切創があり、鎧には泥と赤が混ざる。彼はミラを見て、一瞬だけ無言の意思を共有したあと、独りで動く。

「訓練場にある台帳を見て来た」とハルトは荒く息をつきながら言った。「やつらは夢の徴税を単なる収入源にしただけじゃない。徴収した夢は管理され、選別され、王府の望む『責任ある夢』だけが保存される。消された夢は、記録では『処分された』と封印されている。だが……その台帳の隅に、名字が並んでいた。執行に責任を負う者として。」

ハルトが差し出したのは一枚の羊皮紙。インクは赤で滲み、指の跡がある。カイルはそれを取る。文字に目を走らせた瞬間、彼の目に凍りつくような文字列が飛び込んだ。ある一つの名字が、溢れる月光のように彼の視界を満たす。セレナ・ヴァル。忘却の縁でひょいと拾ったような、その名前は、かつて彼が「守る」と誓った女の名だ――のように感じられた。けれど、その名に伴う「理由」がない。彼はそれを知っていると同時に、何故知っているのかを忘れている。

「セレナが……執行者だったのか」ミラが息を吞んだ。彼女の声に怒りと悲しみが混ざる。聴衆のざわめきが再び高まる。王府の側に伏せられていた名が、今日、露わになったのだ。

カイルは懐中箱を胸に抱く。指先に冷たい痛みが走る。箱の蓋を押してみると、内側から薄い紙片が擦れる音がする。その紙の端に、手で書かれた走り書きの言葉が見えた。彼は読み上げようとした。だが言葉は喉で詰まり、代わりにもう一つの作用が起きた――壇上の女性の夢の残骸が、突如として暴走するようにうずき出した。

夢の暴走は救済を強要されたときに起こる。カイルはその原理を思い出す。彼が誰かを強制的に「目覚め」させ、救済を押しつけるほど、徴税の呪いは増幅する。夢は爆ぜ、残像が現実の隙間に侵入する。だが今日、この女性は裁かれるべきではない。彼女が救われることは望ましい。彼が瞬時に手を伸ばして彼女を抱きしめ、夢の暴走を鎮めることは可能だ。だがその行為は──

「カイル、止めて」ミラが鋭く言った。彼女は目を見開き、顔に血の気をさしている。彼女はそれでも、カイルの意思を尊重すると言った。今回は、と。今回は彼女は自分の判断で止めようとした。だがその判断は、彼女が冷静に計算した結果でもあった。強制的な救済は、王府の呪いに燃料を与える。もしカイルがそれを行使し、セレナの名が執行者として公になれば、王府は反発し、呪いはもっと粗雑で広い刃を振るう。

カイルの胸の中に薄暗い記憶の流れがある。セレナの手の温度、ある夜に交わした言葉、約束――それらは紙切れのように舞い、指の隙間からこぼれ落ちる。彼の手は震え、ついに箱の蓋を開ける。紙片を取り出し、目を落とす。そこには彼女の筆跡で書かれたものがあるように見えた。だがその文字は、彼の頭に意味を与えない。意味の空白。彼はそれでも読む。

「私が徴するのは夢ではなく、選択だ」と、短く書かれてあった。その下に、汚れた指で押されたようなスタンプ。セレナの印と同じく見えるが、彼はその印が持つ重みを思い出すことができない。

場内の空気が一瞬、止まった。誰もがその小さな紙切れに目を凝らす。ハルトが唇を噛みしめ、軍服のボタンが軋む音がする。徴税の役人は顔をしかめ、聴衆の一部は歓声を上げる者もいる。セレナの名が出たことで、支持者はいっそう声を強め、反対者は逆に沈黙する。

カイルは懐中箱をぎゅっと締めた。彼は決定の輪の中に座っている。それは彼が望んだ座席であり、同時に最も重い鎖でもある。彼は自分に