眠りを失う王子は神を告発する

眠りを失う王子は神を告発する 第7話「第6章」

石畳に朝の冷気が張りついたままの広場に、厚い人垣とひび割れた像が並んでいた。中央の台座には真鍮の鏡板がはめられ、そこから微かに蒼い光が滲んでいる。光は眠らない目のように、近づく者の顔を映し返した。

石畳に朝の冷気が張りついたままの広場に、厚い人垣とひび割れた像が並んでいた。中央の台座には真鍮の鏡板がはめられ、そこから微かに蒼い光が滲んでいる。光は眠らない目のように、近づく者の顔を映し返した。

「ここでやるのね」エレナが低く呟いた。鎧の金属音が静寂を引き裂く。彼女の視線は、台座を囲む高位神官の列と、広場のはしに置かれた監視塔へ交互に走っていた。

アルトゥールは鏡板の前に立ち、両手の指先で冷たい縁を撫でていた。掌の感覚が薄れている。昨夜から続く白い疲労が、皮膚の下で constantes(止まらない鼓動)のように響いた。彼の瞳は黒曜のように深く、しかし時折そこにぽっかりと穴があく。一瞬、幼い頃の笑い声が宙に浮かんで消えたことを彼は追いかけようとしたが、音の尾は指の間から滑り落ちていった。

「アルトゥール殿下、ここは──」マルクが近づいてきて、証束を差し出した。革紐で結ばれた古びた細工箱。箱の蓋に刻まれた紋は、王家のものに似ていたが少しだけ歪んでいた。「証束は準備できています。村人たちの証言をまとめます。殿下は……」

「私がやる。」アルトゥールの声は穏やかだったが、割れ目が入っている。言葉の最後で、彼はふいに自分が言い終えた理由を忘れかけ、まるでそれが初めての言葉であるかのように確かめるように息を吐いた。「私があの声を、みんなの前で繋ぐ。誰かに代わってほしくない。」

エレナの表情が固くなる。彼女は王を護る兵士だが、今は護る対象以上に責任を抱えている。「殿下、あなたの――記憶が危ない。前回の儀式で何を失ったか。ここで無理をすれば──」

「分かっている。」アルトゥールは薄く笑った。それは優しさを含んだ笑顔だったが、欠けている歯がわずかに見える。彼は証束を受け取り、箱の紐を解いた。中からは、採取された紙片と布片、髪の房、古い鍵、そして小さな硝子管が一つ、柔らかな光を放っていた。硝子の中には、人の息のように白い霧が渦巻いている。

「証束は、呪いに触れた記憶を一つに結ぶ道具だ。声にならない声を束ねれば、誰もが見てきたことを共有できる。しかし――」シヴィールが低く漏らした。彼女はかつて神殿に仕えた女司祭で、青白い肌に古い儀式の痕が残っている。「束ねるほどに、束ねた者の中にあった別の記憶が溶けるわ。代わりに白い空白が入る。殿下の苦しみは、私たちも知っている。」

アルトゥールは手を止めなかった。彼の指先に記憶が触れるたび、皮膚の下で糸が切れるような感覚が走る。最初に来たのは、年老いた羊飼いの証言だった。羊飼いの目は眠らない半分の焦燥で満ち、夜通し家を見張るために二度と横になれなくなった。羊飼いの声はアルトゥールの頭に直接流れ込み、羊の匂い、地面の濡れ、妻の名前を呼ぶひび割れた音を残していく。その瞬間、アルトゥールの中から別の記憶が崩れた──陶器の小さい壺、母の手の跡、彼が覚えていたはずの一つの風景。彼はそれを探したが、空洞があった。

「止めて!」マルクが叫んだ。だがアルトゥールは証束の力を抑えられないように前かがみになった。集まった証言が、彼の頭の中で絡み合い、白い糸の束となり、鏡板に向かって吐き出される。

広場の空気が変わった。証束から紡がれた像が、真鍮の鏡板を媒介にして実体を帯びる。風がないのに人々の髪が揺れ、広場の灯が揺らいだ。映像は生々しい。高位神官が深夜に子供を連れ出し、眠らせないための薬を投与する場面。軍の書類に押された"覚醒の許可"という印。笑い声が悲鳴に変わり、会衆の中にいた一部の者が吐きそうになって顔を手で覆った。

「見よ!」ある老婆が叫んだ。かつての従順な者の声が怒りに変わる。いくつかの家族は呆然とし、いくつかの顔は赤く染まった。

だが同時に、アルトゥールの中で新たな穴が広がっていった。次々と思い出が蒸発する。幼い頃に読んだ物語の題名、ある夜に母が歌ったはずの子守唄の一行、友との約束の形。彼はその欠落を痛みとして感じ、歯を食いしばった。

「殿下、もうやめて!」エレナが叫び、アルトゥールを押し戻そうとした。だが彼は手を振りほどき、さらに深く証束に指を入れた。今度は、広場の外にある牢檻で眠りを奪われた少年の証言が流れた。少年は夜ずっと糸車の前で立たされ、眠れば罰を受けると教えられていた。彼を救うことは可能だ。アルトゥールの瞳に一瞬、救済の光が灯った。

「助けると──」シヴィールが息を呑む。「強制的な救済は、呪いの反動を起こす。量が大きければ大きいほど、呪いは広がる仕組み……私たちはそれを利用してきた。」

アルトゥールはそれを聞かなかった。彼は少年の顔に直接手を伸ばし、証束から出した白い糸をその子のために結び直した。その瞬間、広場の空気が鋭く裂けるようにして、重い音が鳴った。群衆の中で眠りを失った者が一斉に身じろぎし、嘔吐し、悲鳴を上げた。数名が目を見開き、焦点を合わせられず震え出す。人々の脳が同時に眠らない状態へと引っ張られ、身体が悲鳴を上げた。

「呪いが──増幅した!」マルクが叫ぶ。シヴィールは顔を青ざめさせ、口を押さえた。人々は肉体の限界に達し、幾人かはその場で倒れ、眼球が乾くような音が聞こえた──それは喉の奥で砂が鳴るような、遠い雷鳴のような音だった。

アルトゥールはその音を聞きながら、幼い自分の名を呼ぶ声をもう忘れてしまったことに気づいた。彼の胸にぽっかりと空いた穴は、まるで古い城の廃墟の窓のように冷たく、風がすーっと通り抜けた。代償は確かに、そして残酷に払われた。

その時、監視塔の影から黒いマントが流れ落ちるようにして高司祭ヘルモンが現れた。彼の顔は灰色で、目は赤い星のように光った。伴われた兵は、長柄の音叉のような器具を掲げ、それが空間に櫛をかけるように音を立てると、証束が放った像はぼろぼろと崩れ、真鍮の鏡板に縫い付けられたように残った証拠だけが残された。

「王子よ、玩具を弄ぶのもそろそろにしたまえ」とヘルモンは静かに言った。だがその声には震えがあった。彼は何かを恐れているようであり、同時にどこか自身を弁護するようでもあった。

「あなたたちは、何をしているんだ!」エレナが前に出た。兵士たちが棍棒を構える。だが群衆の一部は既に動揺し、神官たちに向かって石を投げ始めている。

その混乱の只中で、シヴィールが祭壇の縁に手をかけ、アルトゥールの耳元でそっと囁いた。「殿下、聞きなさい。あなたの眠りを奪うものと、神殿の覚醒を司るものは同じ詩句から組み立てられている。呪いは、記憶を代価にして眠らぬ目を生み出す。あなたの力もまた、その詩句を織りなおす術に過ぎないのよ。」

アルトゥールは震えた指で額に触れ、そこに残った空白を押さえていた。もしシヴィールの言うことが正しければ、彼の能力は神殿の支配の鏡像だ。彼が真実を晒せば晒すほど、その根元を露呈させるが、同時に自分自身の中の記憶が切り取られ、やがて自分が何者だったかを忘れてしまう。さらに悪いことに、無理に救済を行えば呪いは広がり、目の前の人々を苦しめる。

広場の喧噪の中、アルトゥールは考える余地さえなかった。彼はまだ、誰かの痛みを見過ごすことができなかった。だが今、彼の選び方は違っていた。無計画な暴露は