夢葬高校のプロトコル

夢葬高校のプロトコル 第8話「第七章 同じ悪夢の三つの視点」

ミツルが組み上げた小さな端末は、点滅するラインと淡い波形だけで教えてくれた。接続準備完了。三人はとっくに許可を取っていた。眠っている被害生徒たちの家族も、学校も、もはや秘密の共有者だった。時間の制約は七分間。だが今回は単純な救出ではない。三方向から同じ核へ迫り、夢同士が結ばれている痕跡を確かめる。白い校庭、そして――十三番目の座席が何であるかを確定する。

ミツルが組み上げた小さな端末は、点滅するラインと淡い波形だけで教えてくれた。接続準備完了。三人はとっくに許可を取っていた。眠っている被害生徒たちの家族も、学校も、もはや秘密の共有者だった。時間の制約は七分間。だが今回は単純な救出ではない。三方向から同じ核へ迫り、夢同士が結ばれている痕跡を確かめる。白い校庭、そして――十三番目の座席が何であるかを確定する。

「同期、入るぞ」ナギが囁く。同期役はミツルだ。彼は現実側の波形を固め、三人の接続時間を数える。画面の隅に欠けた月のアイコンが一つ、二つと減っていくのが見える。

三つの接続音が、ほとんど同時に耳に入った。脳内の振動がゲートを開く。引き裂くような感覚を経て、三人は別々の夢景へ放たれた。

シンの視界は廊下だった。旧校舎の廊下――だが床は吸い込まれた水面のように濡れて、蛍光灯の光がゆがんで曲がっている。壁に貼られたポスターが波間に漂い、誰かの「名前」が水分と一緒ににじんでいた。前方、廊下の終わりに白いフェンスと小さな時計塔が見える。白い校庭だ。

ナギは遊園地に立っていた。観覧車は止まり、ゴンドラの窓からは白い草原が透けて見える。屋台の提灯は逆さにぶら下がり、そこから黒い制服の紙片がひらひらと降り続けている。空気はわずかに砂糖の匂いがして、笑い声の残響が糸のようにぶつかり合っていた。

ミツルは地下鉄のホームに降りていた。駅名表示は消え、ホームの向こうにいつまでも続くトンネルが白光を放っている。線路の代わりに十列ほどの座席が整然と並び、そのうちの一つだけが空席になっている。空席の隣には、小さな折り紙の手裏剣が置かれていた。

三人は同時に、同じ小さな事物に気づく。折り紙、あるいは紙に描かれた絵。三つの場面にそれぞれ貼り付いた紙には、同じ三つ並びの数字が書かれていた――3・1・7。筆跡は違う。だが数字は同じだった。

「3・1・7……」ミツルの声がごく低くヘッドセットを震わせる。現実の応答にのせて、三人は互いの報告を交換した。夢同士は直接つながっている。だが彼らはつなげられている者ではない。別々の身体に、別々の視点で結ばれた一つの核がある。接続者としての冷たい理屈が、静かに首をもたげる。

「ここ、駅の座席。十三個並んでるけど、向こうの一つだけ別物だ」ミツルは窓のような端末に波形を映し、北の矢印がまた狂っているのを示した。彼の地図は北を誤表示していた。旧校舎の実習室でそれを見たときと同じ現象だ。白い校庭は物理の上下を裏返す。

シンは廊下の端、白いフェンスに向かって歩いた。水面に落ちる足跡は波紋にならず、代わりに黒い制服の群れがひらひらと浮かび上がる。彼はそのうちの一枚を掴んだ。紙片はやがて紙ではなく薄い布になり、中に細かな刺繍のような文字が浮く。見覚えのある符号――幼いときに自分が繰り返し見た、壊れたおもちゃの模様の一部だった。

胸の奥が冷えた。あの模様を、確かに誰かが縫っていた。誰だ。誰の手だ。だが答えはすぐに消え、白い校庭の遠景の方へ押し流される。

ナギは観覧車のゴンドラの中で、ぬいぐるみの山に埋もれていた。ぬいぐるみは「重さ」を持っている。彼女の能力が夢の物に乗って働くとき、感情は実体を得る。ある人の罪悪感や恐れが、詰め物になり、縫い目の下からこぼれてくる。ナギはただ触れて調べるつもりだったが、その瞬間、ぬいぐるみの一つがずしりと落ち、彼女の胸に押しつけられた。

重い。圧倒的な重さが、彼女の呼吸を押しつぶす。視界が黒く滲み、耳鳴りがして、彼女の身体は動かなくなりそうだった。物理的な重さではなく、「誰かを失った」感覚だ。誰のだ。たくさんの誰か。祭りの音が遠ざかり、影の中に、たしかに同じ数字が縫い付けられた小さな布片が見えた。3・1・7。ナギは吐き出すように数字を繰り返した。

ああ、ナギ。シンはヘッドセット越しに彼女の乱れた呼吸を拾った。言葉は届く。だが彼女が重さに潰されることを、断夢で切ってはいけない。断夢は危険だ。誤れば夢主そのものの記憶を切り落としてしまう。彼らはここで同じ過ちを繰り返してはならない。シンは息を整え、目の前に漂う黒い制服の一枚を手に取った。夢の物体は手で持てる。ナギが重さを移したぬいぐるみの一つを、シンは無理にでも受け止めにいった。

「持つ」彼は短く言った。なんでもない言葉だが、ナギの耳には届いた。彼女はぎこちなく身体を動かし、ぬいぐるみの一角を差し出す。シンは両手でそれを支えた。重さは減らない。ただ、分配される。夢の中での物理法則は変わるが、感情の負荷は分け合える。彼が受け止めると、それだけナギの体感は軽くなる。ナギの視界に、すっと色が戻る。

「くそ、ありがとう」とナギは短く吐き捨てた。怒りにも似た安堵が混じる。彼女の顔に初めて笑みが走る。笑い声はまた砂糖の匂いに溶け込んだ。

ミツルは地下トンネルの暗闇で、静かに立ち止まった。端末が示す地図上の線が、ある一点で折れ曲がっていた。三つの夢の座標が、そこへ集まる。座席――十三個のうちの十三番目。ミツルは膝をつき、指で空席の縁をなぞった。そこに、ほのかな残留波形があった。人間の波形とは違う。複数の脳波が同期して作り出した「ノード」の痕跡だ。

彼の中で、地図が急に意味を結んだ。北の誤表示は、白い校庭が上下を転倒させているからだけではない。複数の夢を位相をずらして固定する装置――座席は人を座らせるためのものではなく、夢の位相をロックするための「位置」だった。誰かがそこに「位置」を植えつけると、違う場所にある夢が同じ校庭を共有する。複数の夢が同時に白い校庭を見てしまうと、個々の自己認識がすり合わせられる。結び合わされるのだ。

「座席は……固定点なんだ」ミツルの声は震えていた。彼の口から出る言葉に、三人は現実のように背筋を伸ばす。だがそれは現実ではない。夢の中の合図は、現実の選択枠を縮める。座席を置いた者は、夢を渡り歩き、記憶を盗み、つなげることができる。まさしく夢葬の痕跡だ。

シンは廊下の水面に映る自分の顔を見た。そこには幼い頃の自分と、裂け目のように並んだ記憶の断片が重なっていた。自分だけの過去ではない。誰かの笑い、誰かの泣き声、誰かの匂い――それらが自分の中で縫い合わされている。だとしたら、僕は誰の記憶からできているのか。シンの胸を一つの考えが駆け抜ける。まさか、複数の生徒の記憶のかけらが集まって自分を形成している――それが、本当に可能なら。

思考の脆弱さに、彼は軽い頭痛を覚えた。幼いときからあった、特定のチャイム音への痛みがその先端を刺した。あの音は、実験の始まりの合図だった。もし自分が実験の被験者だったとしたら、切断された自己認識の断片がここに残っているのか。目の前の水面に、折れた影が瞬いた。影は一瞬、彼の顔に似た別の顔を見せて、すぐに溶けてしまう。

「シン?」ナギの声が届く。彼女は観覧車の最上部で、手に抱えたぬいぐるみの目を覗き込んでいた。ぬいぐるみの目の反射に、駅のホームの折り紙が映っている。視界が重なり、三つの場面がぐるりと回転した。

ミツルは端末を操作し、何枚かの波形を重ね合わせた。重ねると、白い校庭へ伸びる三つの道が、一点で作る小さ