祝卓の王子
味を失っても、選ぶという祝福は残る。
あらすじ
リオネル・アステル――かつて小さな食堂で人の一口を読んでいた久世晶は、王子として王宮の厨房に立つ。しかし彼は味をほとんど失い、温度や所作、人の選び方でしか世界と交わることができない。王都では欠けた白皿や黒い塩壺をめぐる供給の不正と、配分を一律化しようとする宰相ヴァルドの圧力が広がる。リオネルは台所仕事と記録を手がかりに、仲間たちと共に人々が「自分の意思で一口を選べる」場を守ろうと動き出す。料理の細部描写、政治と民衆の緊張、欠けた皿を繋ぐ儀式――味を失った者の視点から進む調査と葛藤が物語の核となる。