役返しの落第者
裏方の視線で、奪われた名を一つずつ返す物語。
あらすじ
佐倉透として舞台裏を生きた記憶を引き継いで転生したリオネル・アシュは、配役院が朱色の札で人々に役を貼り付ける王国で“落第者”として指定される。だが彼は落第を放棄ではなく、裏方の視線で役を「返す」術として使うことを選ぶ。舞台のように演出された都市や瓦礫の塔、記録庫や古びた劇場を巡り、ミナ、グラウ、セナ、ノエルといった仲間とともに、奪われた名や押し付けられた責務を本人の意思に戻していく。返却は他者の痛みと記憶を一時的に受け取る代償を伴い、制度と向き合う中で彼らの選択と絆が試される。舞台裏の所作や配役札、余分な指の像といったモチーフが織りなす物語は、「名」を取り戻すための旅とその倫理を静かに描く。