廃校体育館のロボット合唱団

廃校体育館のロボット合唱団 第5話「第4章:13番目の欠落」

「ひどい……」 陽菜は、バラバラになったユニット13の残骸を抱きしめた。それはまるで、誰かに激しく打ち据えられたかのような痛々しい姿だった。 蓮が慎重にその頭部を受け取り、内部を覗き込む。 「……基盤が生きてる。幸い、メインメモリのチップは無事だ。でも、こいつを起動させるためのエネルギー源が足りない。専用の電源ユニットが必要だ」 「電源ユニット? それはどこにあるの?」 「普通なら本体の胴体部分にあるはずだが、これには頭しかない。誰かが意図的に引きちぎったんだ」 その時、体育館の外で車のドアが閉まる音がした。 「隠れて!」 陽菜と蓮は、咄嗟に跳び箱の陰に身を潜めた。 入ってきたのは加藤と、もう

「ひどい……」
 陽菜は、バラバラになったユニット13の残骸を抱きしめた。それはまるで、誰かに激しく打ち据えられたかのような痛々しい姿だった。
 蓮が慎重にその頭部を受け取り、内部を覗き込む。
「……基盤が生きてる。幸い、メインメモリのチップは無事だ。でも、こいつを起動させるためのエネルギー源が足りない。専用の電源ユニットが必要だ」
「電源ユニット? それはどこにあるの?」
「普通なら本体の胴体部分にあるはずだが、これには頭しかない。誰かが意図的に引きちぎったんだ」
 その時、体育館の外で車のドアが閉まる音がした。
「隠れて!」
 陽菜と蓮は、咄嗟に跳び箱の陰に身を潜めた。
 入ってきたのは加藤と、もう一人、見慣れないスーツ姿の男だった。
「……ですから、予定通り進めてください。来週には解体を開始し、更地にする。常盤の件は、もう終わったことなんです」
 スーツの男が冷淡な声で言った。
「分かっております。ですが、あのロボットたちが……昨日、子どもたちが中に入っていたようでして。もし変な噂が広まると」
「噂など、根拠のない妄想として処理すればいい。あのダムの底に沈んだのは、ただの古い村じゃない。町の恥部だ。補償金の不正受給、住民同士の対立……それらを蒸し返すような真似はさせない」
 加藤は卑屈な笑みを浮かべて頷いた。
「もちろんです。ロボットは明日、専門の廃棄業者が引き取ります。スクラップにしてしまえば、何も残りません」
 二人の足音が遠ざかり、体育館の扉が閉まるまで、陽菜は呼吸を止めていた。
 悔しさと恐怖で、指先が震える。
「……恥部だって? あの子たちの歌が?」
 陽菜はユニット13の頭部を強く握りしめた。
「蓮、お願い。この子を直して。明日までに、どうしてもあの歌を聴かなきゃいけない気がするの」
 蓮は無言で陽菜を見つめ、それから力強く頷いた。
「分かった。俺の親父の工場へ持っていこう。あそこなら、古い電源の代替品が作れるかもしれない」