透明な島の給食当番

透明な島の給食当番 第5話「第4章:屈折する視線」

ハルの問いかけに、僕は言葉を失った。透明な机の向こう側で、彼が抱えていた「秘密」が剥き出しになっている。美央は一瞬たじろいだが、すぐに持ち前の正義感を盾にして口を開いた。

ハルの問いかけに、僕は言葉を失った。透明な机の向こう側で、彼が抱えていた「秘密」が剥き出しになっている。美央は一瞬たじろいだが、すぐに持ち前の正義感を盾にして口を開いた。

「ハル君、これ……見たわ。お金のこと、大変なんでしょ? どうして相談してくれなかったの? 私たち、友達じゃない」

美央の言葉は優しさに満ちていたはずだった。だが、ハルにとっては、それは心臓を素手で掴まれるような衝撃だったに違いない。ハルは力なく笑った。その笑顔は、給食の時に見せていたものとは似ても似つかない、壊れそうなほど脆いものだった。

「……友達だから、言いたくなかったんだよ」

ハルはそれだけ言うと、背を向けて走り去った。透明な廊下を駆けていく彼の足音が、校舎全体に響き渡る。透明な日は音が遠くまで届く。彼のすすり泣くような呼吸の音までが、僕の耳にこびりついて離れなかった。

「ハル君!」

美央が追いかけようとしたが、僕は彼女の腕を掴んだ。

「……もうやめよう、美央。ハルは、助けてほしいなんて一言も言ってない」

「でも、放っておけないじゃない! 凪だって、あの文字を見たんでしょ? 島が教えてくれたんだよ、ハル君を助けてって!」

美央の瞳には涙が浮かんでいた。彼女は本気で、ハルのために良かれと思って行動しているのだ。それが一番厄介だった。悪意のない善意ほど、人を深く傷つけるものはない。

その日の帰り道、島を包む透明な空気は、ひどく冷たく感じられた。自分の影だけが地面に濃く落ちている。透明な島では、隠れる場所がない。ハルが言っていた「嘘」は、彼にとっての唯一の隠れ家だったのかもしれない。それを僕たちが壊してしまったのだ。

翌日、ハルは学校に来なかった。彼の机は透明なまま、主を失って虚空に浮いていた。