透明な島の給食当番 第4話「第3章:透明な放課後」
翌日も、島はまだ透明なままだった。大潮の影響で干潮の時間が長く続いているらしい。学校が終わった後、僕と美央は誰もいなくなった教室に残った。
翌日も、島はまだ透明なままだった。大潮の影響で干潮の時間が長く続いているらしい。学校が終わった後、僕と美央は誰もいなくなった教室に残った。
「ハル君の机、見てみようよ」
美央の提案に、僕は息を呑んだ。
「それは……ダメだよ。プライバシーっていうか……」
「調査だよ、調査! 彼を助けるためのね」
美央は透明な机の天板を透かして、引き出しの中を覗き込んだ。透明化現象のせいで、机の中に何が入っているかは外側から丸見えだった。教科書、ノート、筆箱。そして、その奥に押し込まれた一通の封筒。
美央がそれを指差した。
「見て、あれ」
封筒には赤い文字で『至急』とスタンプが押されていた。差出人は金融機関の名前だ。僕たちは透明な壁を透かして、その中身を読み取ろうとした。そこには、目を疑うような数字が並んでいた。借金の督促状だ。
「ハル君のお家……お金で困ってるんだ」
美央が声を潜めて言った。ハルはいつも「お父さんの仕事の都合で転校するんだ」と言っていた。でも、現実はもっと切迫したものだったのかもしれない。
「だから『うそつき』だったんだ……」
僕は胸が締め付けられるような思いがした。ハルは、友達に心配をかけたくなくて、あるいは恥ずかしくて、ずっと嘘をつき続けていたのだ。それを、僕たちは本人の許可なく暴いてしまった。
「よし、決めたわ。お別れ会で、みんなにこのことを話して、カンパを募りましょう。みんなで少しずつお金を出し合えば、ハル君の助けになるはずよ!」
「えっ、それは……!」
僕が反論しようとしたその時、背後でカタン、と音がした。
振り返ると、そこにはハルが立っていた。彼は忘れ物を取りに来たのか、手に上履きを持っていた。彼の視線は、僕たちが覗き込んでいた自分の机に注がれていた。
ハルの顔から、血の気が引いていくのがわかった。透明な校舎の中で、彼の存在だけがひどく浮き彫りになって見えた。
「……何してるの?」
ハルの声は、震えていた。それは怒りというよりも、深い悲しみと絶望に満ちた響きだった。