透明な島の給食当番 第3話「第2章:秘密の共有と正義の芽」
給食の時間が終わっても、僕の頭の中はあの文字のことでいっぱいだった。ハルは美味しそうにスープを飲み干していた。彼にはあの文字が見えていなかったのだろうか。あるいは、見えていても気づかないふりをしていたのだろうか。
給食の時間が終わっても、僕の頭の中はあの文字のことでいっぱいだった。ハルは美味しそうにスープを飲み干していた。彼にはあの文字が見えていなかったのだろうか。あるいは、見えていても気づかないふりをしていたのだろうか。
放課後、僕は透明なグラウンドの隅で、美央に呼び止められた。
「凪、隠しても無駄だよ。給食の時、何か見たんでしょ?」
美央の直感は、時として恐ろしいほど正確だ。僕はためらったが、一人で抱えきれる自信がなく、小声で打ち明けた。
「……ハルのスープの中に、文字が見えたんだ。『うそつき』って」
美央は目を見開いた。驚くかと思いきや、彼女の表情は次第に興奮の色を帯びていった。
「やっぱり! おばあちゃんが言ってた通りだわ。透明な島が『休息』する日、給食には食べた人の秘密が浮かび上がるって。それを見ることができるのは、心を込めて配膳した給食当番だけなんだって」
「そんな迷信……本当にあったんだ」
「迷信じゃないわ、事実よ! ねぇ凪、これってすごいことじゃない? ハル君、いつも笑顔だけど、何か辛いことを隠してるのかも。私たちで助けてあげなきゃ」
美央の声には、一点の曇りもない「正義」が宿っていた。だが、僕は言いようのない不安を感じていた。秘密を知るということは、その人の心の柔らかい部分に土足で踏み込むことではないだろうか。
「でも、ハルは何も言ってないし……」
「言えないから秘密なんでしょ! ハル君はもうすぐ転校しちゃうんだよ? このまま嘘を抱えたままお別れなんて、悲しすぎるじゃない。本当のことを話して、スッキリして旅立ってほしいと思わない?」
美央の言葉は正論に聞こえた。だが、その「正論」が、どこか刃物のように鋭く感じられるのはなぜだろう。僕は彼女の勢いに押され、二人でハルの秘密を探ることに同意してしまった。それが、取り返しのつかない事態を招くことになるとも知らずに。