雨を集める宇宙港 第11話「第10章:高度五千メートルの賭け」
宇宙港の再建は、その日のうちから始まった。 公社の幹部たちは、隠蔽工作と独占禁止法違反の疑いで次々と拘束された。代わって発足したのは、地上自治体と宇宙港の整備士たち、そして科学者たちで構成される「流域水資源共有委員会」だった。 カナタは傷が癒える間もなく、父と共に新しい制御システムの構築に携わった。 今度のシステムには、公社の時のようなブラックボックスはない。すべてのデータは公開され、誰でも空の状態を確認できるようになっている。 ある日、カナタは再建中の展望デッキに立っていた。 かつては「水を奪うため」に空を見上げていたが、今は「雨の行方を見守るため」に空を見る。 「カナタ、調子はどうだい?」
宇宙港の再建は、その日のうちから始まった。
公社の幹部たちは、隠蔽工作と独占禁止法違反の疑いで次々と拘束された。代わって発足したのは、地上自治体と宇宙港の整備士たち、そして科学者たちで構成される「流域水資源共有委員会」だった。
カナタは傷が癒える間もなく、父と共に新しい制御システムの構築に携わった。
今度のシステムには、公社の時のようなブラックボックスはない。すべてのデータは公開され、誰でも空の状態を確認できるようになっている。
ある日、カナタは再建中の展望デッキに立っていた。
かつては「水を奪うため」に空を見上げていたが、今は「雨の行方を見守るため」に空を見る。
「カナタ、調子はどうだい?」
後ろから声をかけてきたのは、ゴンドウだった。彼は新しい委員会の「技術顧問」に就任し、相変わらず忙しそうに走り回っている。
「いいですよ。新しい膜の展開シミュレーションも順調です。今夜には、北部の砂漠地帯に霧を届ける予定です」
「ははっ、雨の番人か。お前も親父さんに似て、空に恋してるな」
ゴンドウは笑いながら、カナタの背中を叩いた。
カナタは、ポケットから父のペンダントを取り出した。中身のメモリスティックは、新しいシステムの「核」として使われているが、殻の部分は今もカナタの宝物だ。
ペンダントの裏側には、父が刻んだ小さな文字があった。
『To Kanata. The sky belongs to no one.(カナタへ。空は誰のものでもない)』
その言葉を指でなぞりながら、カナタは遠くの山並みを見た。
茶色かった山肌には、すでにうっすらと緑が戻り始めている。水が流れれば、命が戻る。命が戻れば、人の心も変わっていく。
リアからのメッセージが届いた。
『今日の夕飯、みんなで食べるわよ。おじさんも呼んであるから。久しぶりに、故郷の料理を作ってみたの』
カナタは微笑み、返信を打った。
「すぐに行くよ」