泣かないロボットの遺言状 第13話「第十二章:泣かないロボットの遺言状」
律はモモの隣に立ち、一緒に桜を見上げた。 「モモ、今は何が見える? 君のセンサーには、この世界はどう映っているんだ?」 「……愛が見えます、律様。それは波長では測定できませんが、データの相関関係から明らかです」 「愛? ロボットにその定義がわかるのか?」 「定義はわかりません。ですが、この温かな光景を記述するのに、私の辞書にはそれ以外の言葉が見当たりません。慎一郎様が教えてくれた言葉です」 モモはゆっくりと、律に向かって微笑んだ。それは慎一郎がかつて見せた、不器用で優しい微笑みそのものだった。 泣かないロボットが遺した遺言状。 それは紙に書かれた文字ではなく、人々の心に刻まれた、消えることのな
律はモモの隣に立ち、一緒に桜を見上げた。
「モモ、今は何が見える? 君のセンサーには、この世界はどう映っているんだ?」
「……愛が見えます、律様。それは波長では測定できませんが、データの相関関係から明らかです」
「愛? ロボットにその定義がわかるのか?」
「定義はわかりません。ですが、この温かな光景を記述するのに、私の辞書にはそれ以外の言葉が見当たりません。慎一郎様が教えてくれた言葉です」
モモはゆっくりと、律に向かって微笑んだ。それは慎一郎がかつて見せた、不器用で優しい微笑みそのものだった。
泣かないロボットが遺した遺言状。
それは紙に書かれた文字ではなく、人々の心に刻まれた、消えることのない記憶だった。
律は空を見上げ、深く息を吸い込んだ。
法は人のためにある。
その信念は、今や彼自身の血肉となっていた。
風が吹き抜け、桜の花びらがモモの肩に舞い落ちた。
機械と人間が、同じ景色を見て、同じ温もりを感じる世界。
そんな未来が、すぐそこまで来ていることを、律は確信していた。