泣かないロボットの遺言状 第10話「第九章:機械の反抗と新たな旅立ち」
しかし、物語にはまだ続きがあった。 数日後、律が事務所で荷物をまとめていると(彼は高坂との意見の相違から辞職を決意していた)、モモが一人で事務所を訪ねてきたのだ。 「モモ? どうやってここまで? 健二さんは?」 「公共交通機関を利用しました。健二様には許可を得ています。律様に、お渡ししなければならない『真実の欠片』があります」 モモが差し出したのは、一本の古いビデオテープと、慎一郎の自筆の封筒だった。 「これは……?」 「慎一郎様から、律様個人への遺言です。私が隔離領域の最後の一片として、最も深い階層に保持していたものです。条件は『律様が法よりも人を優先した時』に開放することでした」 律は震え
しかし、物語にはまだ続きがあった。
数日後、律が事務所で荷物をまとめていると(彼は高坂との意見の相違から辞職を決意していた)、モモが一人で事務所を訪ねてきたのだ。
「モモ? どうやってここまで? 健二さんは?」
「公共交通機関を利用しました。健二様には許可を得ています。律様に、お渡ししなければならない『真実の欠片』があります」
モモが差し出したのは、一本の古いビデオテープと、慎一郎の自筆の封筒だった。
「これは……?」
「慎一郎様から、律様個人への遺言です。私が隔離領域の最後の一片として、最も深い階層に保持していたものです。条件は『律様が法よりも人を優先した時』に開放することでした」
律は震える手で封筒を開けた。中には、短い手紙が入っていた。
『律くんへ。君がこの手紙を読んでいるということは、君は私の期待通り、あるいは期待以上に、青臭く、愚かで、最高に温かい法律家になったということだろう。誇りに思いなさい。法は時に残酷だが、それを運用する人間が温かければ、世界はわずかに救われる。モモを君に託そうと思ったが、やはり彼女はあの家にいるべきだ。代わりに、私の個人事務所の権利と、この街の古いビルの一室を君に譲る。そこを、法と感情の交差点にしなさい』
律は絶句した。慎一郎の個人事務所――それは楓市の一等地にある、歴史ある建物だ。
「慎一郎様は仰いました。『律くんは、泣けないロボットの代わりに泣いてくれる男だ。彼なら、私の失敗を繰り返さないだろう』と」
モモの言葉に、律はついに声を上げて泣いた。それは、師からの最高の評価であり、同時に重いバトンでもあった。