夜の交差点にだけ咲く花 第5話「第4章:姉の隠し事」
翌日、柚葉は実家の自室にこもり、葵の遺品を改めて整理し始めた。三年間、開けることができなかった段ボール箱。そこには、葵が愛用していたカメラ、読みかけの文庫本、そして使い古されたシステム手帳が収められていた。 手帳のページを捲る。葵の筆跡は、彼女の性格そのままに躍動感に溢れていた。しかし、事故の数ヶ月前から、その内容は少しずつ変質していた。 『六角交差点の再開発、何かおかしい。地権者の同意が強引すぎる気がする』 『汐留ネオ・ジャンクション計画の背後にいる「リライト・ホールディングス」。彼らが狙っているのは土地だけじゃない?』 柚葉の手が止まった。葵は単なる大学生としてではなく、再開発反対運動のボ
翌日、柚葉は実家の自室にこもり、葵の遺品を改めて整理し始めた。三年間、開けることができなかった段ボール箱。そこには、葵が愛用していたカメラ、読みかけの文庫本、そして使い古されたシステム手帳が収められていた。
手帳のページを捲る。葵の筆跡は、彼女の性格そのままに躍動感に溢れていた。しかし、事故の数ヶ月前から、その内容は少しずつ変質していた。
『六角交差点の再開発、何かおかしい。地権者の同意が強引すぎる気がする』
『汐留ネオ・ジャンクション計画の背後にいる「リライト・ホールディングス」。彼らが狙っているのは土地だけじゃない?』
柚葉の手が止まった。葵は単なる大学生としてではなく、再開発反対運動のボランティアとして、この街の変容を記録していたのだ。
さらにページを捲ると、最後の日記に辿り着いた。事故当日の日付だ。
『今日、六角交差点の地下で「種」を見つけた。これがあれば、すべてを咲かせ直せるかもしれない。柚葉との待ち合わせの前に、もう一度確認しに行こう』
「種……?」
柚葉はプロローグの光景を思い出した。葵の手からこぼれ落ち、アスファルトの亀裂へと消えていった小さな何か。あれが、葵が日記に書いていた「種」だったのだろうか。
その時、部屋のインターホンが鳴った。モニターを確認すると、スーツ姿の男が二人立っている。
「九条柚葉さんですね。リライト・ホールディングスの者ですが、再開発地区への不法侵入についてお話ししたいことがありまして」
冷たい汗が背中を伝う。昨夜の行動が、すでに監視されていたのだ。柚葉は葵の手帳を咄嗟にリュックに隠し、裏口から家を飛び出した。