鳥籠列車は冬を運ぶ

鳥籠列車は冬を運ぶ 第7話「第6章:忘れられた凍土」

列車は公式の線路を外れ、錆びついた古い廃線へと滑り込んだ。そこは、地図から抹消された凍てつく谷――リインへの道だった。 気温が急激に下がり始める。窓ガラスがバリバリと音を立てて凍りつき、車内には再び「冬」の気配が戻ってきた。しかし、それは鳥籠の中にあった穏やかな冬ではない。すべてを拒絶し、時間を止めてしまうような、刺すような冷気だ。 やがて、列車の速度が落ち、雪に埋もれた小さな駅に滑り込んだ。 「……ここが、サイラスさんの……」 ユノが外へ出ると、そこには息を呑むような光景が広がっていた。 村全体が、巨大な氷の彫刻のように静止していた。広場で遊んでいた子供たち、洗濯物を干そうとしていた女性、ベ

列車は公式の線路を外れ、錆びついた古い廃線へと滑り込んだ。そこは、地図から抹消された凍てつく谷――リインへの道だった。
 気温が急激に下がり始める。窓ガラスがバリバリと音を立てて凍りつき、車内には再び「冬」の気配が戻ってきた。しかし、それは鳥籠の中にあった穏やかな冬ではない。すべてを拒絶し、時間を止めてしまうような、刺すような冷気だ。
 やがて、列車の速度が落ち、雪に埋もれた小さな駅に滑り込んだ。
「……ここが、サイラスさんの……」
 ユノが外へ出ると、そこには息を呑むような光景が広がっていた。
 村全体が、巨大な氷の彫刻のように静止していた。広場で遊んでいた子供たち、洗濯物を干そうとしていた女性、ベンチで新聞を広げていた老人。彼らは皆、三十年前のその瞬間のまま、厚い氷の中に閉じ込められている。
 彼らは死んでいるのではない。管理局が押し付けた「過剰な冬」によって、生命活動を極限まで遅延させられ、解けない眠りについているのだ。
「ひどい……」
 ユノの背後から、連結を免れたサイラスが歩いてきた。彼はボロボロになった服で、愛おしそうに氷の像の一つ――小さな少女の頭を撫でた。
「俺の孫娘だ。あの日、俺は仕事で隣町に行っていて、戻ってきた時にはもう、村はこのザマだった。管理局に何度も訴えたさ。だが連中は『調整中だ』と繰り返すだけで、最後には地図からこの場所を消しやがった」
 サイラスの目からこぼれた涙が、地面に触れる前に小さな氷の粒となって弾けた。
「ユノ、鳥籠はもうすぐ完全に空になる。そうすれば、世界中の連中が俺たちと同じ思いをするんだ。雪が降らない、氷も張らない、だけど心だけが凍りついていく……そんな地獄をな」
 ユノは、氷の中の少女の瞳を見た。そこには、三十年前の最後に見ただろう、青空への憧れが残っていた。
 管理局のやり方は許せない。でも、サイラスの復讐も、この少女が望んでいることだとは思えなかった。
「サイラスさん、まだ方法があるはずです。冬を消すのでもなく、誰かに押し付けるのでもなく……みんなで分け合う方法が」