鳥籠列車は冬を運ぶ 第6話「第5章:追跡者と沈黙の駅」
操縦室に辿り着いたユノが見たのは、自動操縦システムが赤く点滅し、完全にロックされている光景だった。 「無駄だよ、お嬢ちゃん」 背後から冷ややかな声がした。振り返ると、管理局の制服を着た細身の男――査察官のヴォルグが、拳銃を構えて立っていた。 「この列車は間もなく管理局のコントロール下に入る。老技師のテロ行為はここまでだ。君も協力すれば、見習いとしての経歴に傷はつかないように計らってあげよう」 「……どうして、サイラスさんの故郷を見捨てたんですか?」 ユノは震える声で問いかけた。ヴォルグは鼻で笑った。 「見捨てた? 人聞きが悪いな。我々は『最適化』しただけだ。大陸全体の幸福度を最大化するためには
操縦室に辿り着いたユノが見たのは、自動操縦システムが赤く点滅し、完全にロックされている光景だった。
「無駄だよ、お嬢ちゃん」
背後から冷ややかな声がした。振り返ると、管理局の制服を着た細身の男――査察官のヴォルグが、拳銃を構えて立っていた。
「この列車は間もなく管理局のコントロール下に入る。老技師のテロ行為はここまでだ。君も協力すれば、見習いとしての経歴に傷はつかないように計らってあげよう」
「……どうして、サイラスさんの故郷を見捨てたんですか?」
ユノは震える声で問いかけた。ヴォルグは鼻で笑った。
「見捨てた? 人聞きが悪いな。我々は『最適化』しただけだ。大陸全体の幸福度を最大化するためには、一部の非効率な地域を犠牲にする必要がある。リインのような辺境に季節を届けるコストで、中央都市の一〇〇万人が永遠の春を享受できるんだよ」
「季節は、誰かの持ち物じゃないはずです!」
「いいや、持ち物だ。管理されない季節はただの災害だよ。君だって、あの鳥籠の『重み』を知っているだろう? あれを制御なしに放流してみろ。大陸はたちまち未練と悲しみの吹雪に飲み込まれ、文明は崩壊する」
ヴォルグが引き金に指をかけたその時、足元から激しい衝撃が走った。サイラスが貨物室の予備動力を使って、列車の連結を強制的に解除したのだ。
追跡艦と繋がっていた後方の車両が切り離され、ユノたちが乗る機関車と数両の客車だけが、猛スピードで加速し始めた。
「あいつ、死ぬ気か……!」
ヴォルグが動揺した隙を突き、ユノは消火器を彼に投げつけた。煙が立ち込める中、彼女は操縦盤の緊急レバーを引き抜いた。