灰色砂漠の病院船 第8話「第七章:記憶の共鳴」
「……っ!」 ソラは現実世界へと引き戻された。装置の過負荷で火花が散り、医務室には焦げた匂いが漂っている。 「ソラ! 何をしたの!」 ドアを蹴破るようにしてリナが入ってきた。彼女の防護服は灰で汚れ、呼吸は乱れている。エンジンルームの応急処置を終えて戻ってきたのだ。 「共有モードを使ったわね……。正気なの? 脳が焼き切れてもおかしくなかったのよ!」 「母さん、聞いてください。エリオさんの言っていることは本当です。石英病は、この星が再生するための……」 「そんなことは知っているわ!」 リナの叫び声が、狭い医務室に響いた。ソラは言葉を失った。 「知っていたの……? この病気の正体を」 「ええ、私の父
「……っ!」
ソラは現実世界へと引き戻された。装置の過負荷で火花が散り、医務室には焦げた匂いが漂っている。
「ソラ! 何をしたの!」
ドアを蹴破るようにしてリナが入ってきた。彼女の防護服は灰で汚れ、呼吸は乱れている。エンジンルームの応急処置を終えて戻ってきたのだ。
「共有モードを使ったわね……。正気なの? 脳が焼き切れてもおかしくなかったのよ!」
「母さん、聞いてください。エリオさんの言っていることは本当です。石英病は、この星が再生するための……」
「そんなことは知っているわ!」
リナの叫び声が、狭い医務室に響いた。ソラは言葉を失った。
「知っていたの……? この病気の正体を」
「ええ、私の父――あなたの祖父の代からね。私たちは、惑星の再生を邪魔している『加害者』よ。人間の命を守るために、星の未来を削り取っている。……でも、それが医療でしょう? 星がどうなろうと、目の前で苦しんでいる人間を救うのが、私たちの仕事じゃないの!」
リナの瞳には、深い絶望と、それを覆い隠すための強固な意志が宿っていた。彼女は真実を知りながら、それでも「人間」であることを選んだのだ。たとえそれが、星に対する罪であっても。
「でも、奪うだけの治療じゃ、誰も幸せになれません。エリオさんは、自分の記憶が星の糧になることを望んでいます。……でも、私は彼に生きてほしい。彼の知識と、彼が見つけた花の種があれば、彼が死ななくても星を再生できるはずです!」
ソラはリナの前に立ちはだかった。
「母さん、私に賭けてください。記憶を『奪う』のではなく、『共鳴』させるんです。私の記憶を一時的にエリオさんに貸し与え、結晶化のエネルギーを中和します。そうすれば、彼は記憶を失わずに済むし、結晶も安定するはずです」
「そんな理論、証明されていないわ。あなたの記憶が永久に失われるリスクがある」
「母さんが私を救ってくれたときだって、そうだったんでしょう?」
ソラの言葉に、リナの動きが止まった。
「……見たのね、あのカルテを」
「はい。母さんが私を愛していた記憶を捨ててまで、私を救ってくれたこと……今ならわかります。でも、私は母さんみたいに、大切な人を『知らない誰か』にしたくないんです。……お願い、リナ先生。私を、あなたの助手として信じてください」
沈黙が流れた。外では砂嵐の咆哮が一段と激しくなり、船体が大きく軋む。
やがて、リナは深くため息をつき、棚から一本のメスを取り出した。
「……準備なさい。ただし、私の指示には絶対に従うこと。少しでも異常があれば、即座に接続を切断するわよ」
「はい!」