獣廷書記
白い行を読むたび、代償が刻まれる。歴史を誰が数えるのかを問う裁判譚。
あらすじ
紙谷澄は三十七歳の監査官としての記憶を持ちつつ、少女の姿で地下の裁き場「黒角獣廷」に立つ。ここで彼女は文書に触れ、声に出して読むことで欠落した行や改ざんを暴き出す力を持つが、その代償として記憶の一部を失う。黒い文鎮と左手親指で紙の角を押さえる習慣が彼女を繋ぎ止め、騎士リュネ、石人ガラム、夢喰いのネネ、水盤のヴァルグ、老判事ミルザらとともに、文字を持たない証言や封印された歴史の“白い行”をめぐる審理に挑む。誰の声を歴史として刻むのか――記録と正義、保護と暴露の間で揺れる判廷の葛藤と、紙の余白に響く小さな抵抗が物語の軸となる。