異世界転生風車守の王国騎士

異世界転生風車守の王国騎士 第13話「第12章」

ユズは風車の軸に手を置いたまま、今何をしたいかをはっきりと知っていた。火を止めたい。燃え広がる納屋を、蒼白になった老婆と納屋の中で泣き叫ぶ子らから引き離したい。そしてその先にあるのは、村がこれ以上奪われるのを許さないことだった。

ユズは風車の軸に手を置いたまま、今何をしたいかをはっきりと知っていた。火を止めたい。燃え広がる納屋を、蒼白になった老婆と納屋の中で泣き叫ぶ子らから引き離したい。そしてその先にあるのは、村がこれ以上奪われるのを許さないことだった。

だが手の内側には油がにじみ、軸の向こうで風車の羽根が一枚、深い亀裂を抱えているのをユズは見逃さなかった。そこに刻まれた斜めの線は、自分のことばを否定するように冷たく、昼の光を吸っていた。呼吸はすでに浅かった。前にも、同じ熱さで、違う夜に、ユズは一人の願いを聞いてしまった。その代償は今も胸の奥でざらついている。

「ユズさん! 納屋が――!」老婆の声が割れて軸の下に落ちる。ミツエ婆だ。彼女は最初に来た者で、ユズがこの谷に来てから最初に助けを求めた顔だ。ユズはミツエの目を見てしまうと、理屈が崩れるのを知っていた。あの目は、いつも頼りなげに村を見張ってきた目だ。彼女が願ったら、たとえ世界が燃えようとユズは聞きたくなる――それが自分の守る対象だと、彼は知っていた。

「逃げて!」と若手の鍛冶屋ルオが叫ぶ。ルオは自ら鍬を振り上げて、馬に藁を投げつけるために走った。村の若者たちが一斉に動き、糸のような隊列をつくる。片手に槍、片手に炎を消すための水桶。だが敵の兵は重い。甲冑の鈍い音が谷に落ち、馬の足音が瓦礫を震わせる。

徒党の先頭には逆風の旗が翻っていた。黒い布の上に白い矢の図案。それが掲げられた瞬間、村人たちの動きが一瞬とどまる。旗は徴税の印であり、止風の象徴だ。騎士隊が来るたびにその旗が彼らの言葉を補強する。今回も、端的な命令が投げられた。

「ここは王都の法による風の標定地だ。民は管理に従え。抵抗は違法だ」

読み上げる軍吏の声は、冬の石のように冷たかった。ユズは言葉で押し切られないことを知っていた。文字は人の首を締める縄になる。ミツエの納屋は、彼女の一年分の作物と、小さな孫の寝床とを保持している。失えば移住か餓死か、二つの鈍い選択肢が村を襲う。

「ユズ、どうする?」村の長、サイが背後で問うた。サイは皺の深い顔をしていて、決断をユズにゆだねたわけではない。共に抱える仲間としての問いだ。ユズは息を吸い込み、風車の羽根に触れた手の先で油の匂いを感じる。羽根の亀裂は前回の使用以来大きくなっていた。触れただけで欠片が落ち、粉が指の間に埋まる。

「退くべきだ」と一人、若者が言った。「兵には勝てない。風車が壊れたら、ここは終わりだ」

「納屋の子らは?」ミツエが割り込む。顔に煤の線。目に焦り。ユズはミツエの言葉を無視できない。彼女は最初に助けを求めた人だ。守る対象の最初であり、約束された声だった。

ユズは振り返り、村人たちを見渡す。鍛冶のルオ、農夫のサイ、手伝いの子ら、そして泉の辺りで風笛を握る小さな手。彼らはユズの能力のためだけに存在する仲間ではない。ルオは自分の鍛冶仕事をし、サイは村をまとめ、子らは笑いを忘れまいとしている。だが今、誰かの願いがこの羽根を回すのだ。ユズは知っている。条件は変わらない。自分が整備した風車で、村人が回したいと願う方向へ一度だけ風を分けられる。ただし一人の願いで回すと、羽根は折れ、自分の呼吸が乱れる。

ミツエの目は祈るように開かれていた。ユズは後ろに下がろうとする手を押しとどめた。決断の時間はかぎられている。馬はもう納屋の影にかかる。

「ユズさん、やるんですね?」ルオが言った。問いの調子には非難が混じるかもしれない。だがルオの声には同時に信頼もあった。ルオはもう一度火消し用の袋を肩にかけ、歯を噛んだ。

ユズは首を振る。口を開けば、言い訳が生まれる。彼は言葉を飲み込み、風車の中心に向かって歩いた。軸のふところはいつもより冷たい。彼は羽根の取り付け金具に手を回し、古い油を拭いた。軸を締め直す手に、覚悟をこめる。

ミツエが片膝をつき、声を振り絞る。「ユズ、あの子たちを……あの子たちを! 願う――回して、風を、お願いします!」

その言葉はまっすぐに、刃先のようにユズの胸に刺さった。願いが、まさに条件そのものに合致した。ユズは羽根の台座に手のひらを置き、呼吸を合わせる。彼はこれを何度も練習してきた。呼吸が合うと、羽根は耳鳴りのように唸り、一瞬のうちに谷に風を送る。そしてその風は、願った「方向」にだけ流れる。

だが彼は今回、意図的に「一人の願い」で起動させた。過去の教訓は胸の片隅で喚いている。羽根は折れる。呼吸は乱れる。だが納屋の子らが燃え落ちれば、ユズ一人の呼吸の安寧よりも遥かに大きな損失が生まれる。

ユズは目を閉じた。ミツエの祈りが羽毛のように彼の鼓膜を覆い、羽根は重いながらも回り始めた。最初の一拍で谷に風が走る。干し草の葉がさざめき、煙が曲がる。騎士隊の馬は斜めに吹かれ、標の矢は風に流される。炎は息をつき、炎心から飛んだ火の塊は遠方に投げ出される。火は生気を奪われ、納屋の屋根から舞い上がった煤が宙に溶けた。

一陣の風の力が、兵の列を押し戻す。旗がはためき、騎士の盾が重さを感じて立ち位置を変える。村の者たちは一気に勢いづき、ルオは鍬を村の前に据え、サイは人々を扇動して兵との隙間を埋めた。風は物理の援軍となり、押し戻しながら敵を撹乱する。

だが次の瞬間、ユズは痛みを感じた。それは筋肉の痛みではない。胸の奥で、何かが折れるような音が鳴った。羽根の中で、亀裂が一つ、どうにも止まらぬ速さで走る。金具のきしむ音と共に、羽根は一度大きくたわみ、そして――

ぱきり、と乾いた音が谷へ落ちた。

風は一度だけ暴力的に吹き、空気の塊を押し出して消えた。次の刹那、羽根は動きを止め、羽根の先端が裂け、木屑が雪のように舞った。ユズの手は軸に張り付いたまま、力を失っていく。胸が締め付けられる。呼吸が、砂を噛むようにざらつき、浅く、浅くなった。

「ユズ!」ルオの声が耳に届いた。彼はユズの腕をつかみ、引き寄せようとしたが、ユズは自分の足で留まった。立っていなければならない。守るべきものの前で倒れるわけにはいかない――そう思ったが、次に空気を吸ったとき、まるで肺の中に小さな石を突っ込まれたようで、声が喉に詰まる。

敵は混乱している。騎士隊の間に怒声と指示が飛ぶ。旗手がその黒い旗を引き寄せ、隊列を立て直そうとする。だが人の側面は既に崩れていた。村人たちが一斉に押し寄せる。矢と棒で武器を交わし、鉄の先は豪胆な泥だらけの手に握られ、村は一時の反攻を成功させる。騎士は退く。盾を抱え、馬に代わる間隙を縫って後退する。谷の端に土埃が舞ったとき、勝利の匂いが村を包んだ。

誰かが歓声を上げる。煙が薄れて、ミツエの納屋の端の屋根に残った火は消えただけで、残骸は焦げた匂いとともに残った。人々が互いに抱き合い、泣いて笑った。だがその祝祭の真ん中で、ユズは気づく。自分の呼吸はまだ戻ってこない。胸が締め付けられ、口を開けば小さな息しか出ない。手の中に残った粉と羽根の破片が、彼の意識を薄くし始める。

「ユズ、座れ!」サイが引き寄せた。彼の腕は思ったより冷たかったが、いや、それは自分の体温なのかもしれない。誰かが水を顔にかけ、誰かが古布で喉を押さえた。ルオが羽根の破片を拾い上げ、指先に