異世界転生楽器職人の魔導師

異世界転生楽器職人の魔導師 第13話「第12章」

朝の光が薄く伸び、工房の窓辺に置かれた木の管が影絵のように揺れていた。フィオは手にしたチューニングドライバーをじっと見つめ、ただ一つ、今自分がしたいことを確かめるように息を吐いた。「楽器を守る」。それだけだ。守る対象は目の前にいる人々だった。戸の向こうの路地で震える子供たち、店の裏に身を潜めている老楽師たち、そして昨日、助けを求めに来た若い歌い手レオ――彼らがこの街で自分の声を持ち続けられるようにすること。仲間たちもそこにいる。マルタは手首に絆創膏を巻きながら、フィオのそばで管の底を拭いていた。カーデン──元衛兵の男は複雑な顔で外を見張っている。レオは額に汗をにじませ、唇をかむ。皆、それぞれに

朝の光が薄く伸び、工房の窓辺に置かれた木の管が影絵のように揺れていた。フィオは手にしたチューニングドライバーをじっと見つめ、ただ一つ、今自分がしたいことを確かめるように息を吐いた。「楽器を守る」。それだけだ。守る対象は目の前にいる人々だった。戸の向こうの路地で震える子供たち、店の裏に身を潜めている老楽師たち、そして昨日、助けを求めに来た若い歌い手レオ――彼らがこの街で自分の声を持ち続けられるようにすること。仲間たちもそこにいる。マルタは手首に絆創膏を巻きながら、フィオのそばで管の底を拭いていた。カーデン──元衛兵の男は複雑な顔で外を見張っている。レオは額に汗をにじませ、唇をかむ。皆、それぞれに自分の判断でここにいる。

「大臣の役人たちが九時に来る」カーデンは低く告げる。声は切迫しているが、震えはない。「没収の命令だ。市の音源は公のものだと。持ち主が弁明しても許されないらしい」

「誰が最初に来たかを忘れないで」フィオは言った。彼女にとって約束は仕事の根幹だった。先週、レオが店の扉を叩きながら泣きそうな顔でこう言った。「歌が、俺の歌が、政府に奪われるって」。それが彼女をここへ引き寄せた。礼賛のためではない。守るべき声が、彼らの声が、無理やり消されるのを見過ごせなかった。

「どうする?」マルタの手は震えていた。年老いたサクソフォンが彼女の前で光を浴びている。その管には、フィオが修理を終えたときに預かった一言があるはずだ。マルタはそれを誰にも言えなかった、と言った。聞くべき言葉を持つ者がそのまま消えることを、誰が許せるだろう。

計画は二つあった。正攻法は、楽器を分散して隠す時間を稼ぐこと。裏技は、役人の到着の瞬間に店の表で公演を始めてしまい、「公共のイベント」として法的な保護を引き出すことだ。しかし、後者には条件がある――演奏する楽器所有者の明確な「同意」がいる。フィオの固有能力も同じだ。修理した楽器には、持ち主が言えなかった一言を音色として預けることができる。だがそれはその持ち主が望まなければ鳴らせない。無理やり鳴らせば、代償がある。聴力を失うのだ。

「彼らは脅されて動けないんだ」レオが小さく言った。「父さんはもう、外で問い詰められたときに声が出なかった。家族の前で口をつぐめって、そう言われたらね……」

フィオは自分の耳に手を当てた。過去の仕事で使い込んだ器具の中に、自分の名前を刻んだヘッドフォンがいくつもある。音は彼女の生業だった。耳を失うことは、職人として、魔導師としての全てを削ることを意味した。だが店の裏に山積みになった段ボール箱の中には、奪われれば消えてしまう笛、バイオリン、腐食から救ったトランペットがあった。誰かが先に助けを求めた。彼らを守ることは、彼女が最初に誓ったことだ。

「隠す時間はもうない」カーデンは言う。外で足跡が近づく。鎧の擦れる低い音。役人は来る。時間は刃のようだ。

フィオは無言で工具箱を閉め、置かれていた「音のない笛」を手に取った。そこには何層にも紙が巻かれており、表面には子供の指で彫られた小さな星の痕がある。この笛は、前にもここで沈黙の象徴だと感じたものだ。持ち主は小さな女の子で、彼女は自分の言葉を奪われていた。昨晩、その母親が震える声で「まだ言えないの」と言った。それでも、子供は笛を持って朝を迎えていた。

「同意は、得られないだろう」フィオは静かに言った。周りの目が彼女に集まる。「でも……誰かが、何かを聞く必要がある。役人たちが見せる様式はあまりに非情だ。もし彼らが楽器を市の備品として押収するなら、これらの音が『市民の言葉』であることを示すしかない」

「それは――無理やり鳴らすってことか?」マルタの声は震えた。「フィオ、あなたは――」

フィオは首を振った。言葉の意味は重いが、決断は早かった。「無理に鳴らす。しかし代償は払う。私の耳の一部を失っても構わないかもしれない。だがそのかわり、ここにいる人々と、私に最初に助けを求めたレオの歌を守る」

レオが口を開いた。「いやだ。だめだ、フィオ。君まで――」

「同意のない声は、私の手でしか出せない」フィオは彼の手を短く握った。「私が選ぶ。私が代償を払う。だから、逃げてほしい。マルタ、楽器を奥に隠してくれ。カーデン、外で見張って。役人の目を引く時間を稼って」

仲間たちは反対の色を浮かべたが、誰も動かなかった。合意なき行為は、彼女にとって最大の禁忌だった。だがその日、禁忌は彼女の選択の中に溶けていった。

外から役人たちの号令が聞こえた。分厚い革の手袋をはめた役人が二人、帯剣した槍を先頭にして店の前に立った。彼らは静かに命令を告げ、心地よいほど無表情な声で言った。「楽器の確認を行う。従わない者は法に従うものとする」

フィオは深呼吸を一つして表に出た。彼女の胸は早鐘を打つ。だがそれは恐怖ではなく、決意の音だった。彼女は修理台に置いてあった楽譜箱を抱え、近くに仕立ててあった古いトランペットを取り出した。これはマルタのではない。若い行商人のものだ。持ち主は外にいない。だがその管に預けられた言葉は――確かにあったはずだ。

役人の前に立ったフィオは、声を張らずに言った。「この楽器は市の記録に基づいて、公益行事用に保管されています。展示と演奏のため、確認をお願いします」

役人は冷たい目で答えた。「楽器が公益か否かは我が方が判断する」

彼らは押し入ろうとした。カーデンが剣先で地面を叩く音がした。術策は尽きた。フィオはその瞬間、決めた。胸の中の秤が傾いたのだ。誰かが最初に助けを求めた。彼女はその約束を守る。

彼女はトランペットを唇に当てた。その瞬間、古い記憶のように、修理の過程で楽器に預けられた音が指先を経て戻ってきた。持ち主が言えなかった一言が、震える香りのようにフィオの胸を走る。だがその持ち主はここにいなかった。かえって口に出すことを許さない沈黙が強まっている。

「同意がない」と彼女は自分に言い聞かせた。だが言い聞かせている間に彼女の手が動いていた。トランペットのバルブを押し、深く息を吸い込む。音が出る。だがそれは普通の音ではなかった。フィオの魔導――楽器に宿っていた「音色」は、持ち主の言えなかった一言を、その音として解き放った。音は広がり、路地の石畳を震わせ、通りの向こう側の屋根を揺らした。

駆け寄ってきた路地の人々が立ち止まる。兵士たちも一瞬足を止めた。楽器から流れ出したのは、笑いと後悔と愛と恥ずかしさが混じった、ありふれた人間の言葉だった。誰かの母の「ごめん」、生者の「戻ってきて」、泥だらけの少年の「まだできるよ」という子供の励まし――凍りついた街の日常が、一瞬で音になった。

それは――暴力にも似た解放だった。長い沈黙の下に押し込められていた声が、一斉に溢れ出した。人々の目に涙が光る。役人の顔色が変わった。彼らは急所を突かれたように、言葉の重みに眉根を寄せる。

だが同時に、代償がフィオの中で始まった。最初は高い風鈴の音が耳の中で鳴り始めた。スパークのような鋭さが鼓膜を刺し、顔が熱くなる。次の瞬間、音は深く、暗い海に沈んだように吸い込まれて消えた。彼女は息を止め、流れた音楽の余韻をすがるように