こども王

こども王 第26話「第24章」

大理石の床が冷たく、鉛色の光が大広間を切り裂いていた。高い窓の外では旗がはためき、兵隊たちの列は中庭を埋めている。壇上にはまだ誰も触れていない王冠が、絹の青い布の上で存在を主張していた。王冠はあまりに大きく、子どもの頭に似合うものではない。リクは壇上の端に座り込み、指先でその縁をたぐった。指先に伝わる冷たさが、自分がここに立つ理由を鋭く思い出させる。

大理石の床が冷たく、鉛色の光が大広間を切り裂いていた。高い窓の外では旗がはためき、兵隊たちの列は中庭を埋めている。壇上にはまだ誰も触れていない王冠が、絹の青い布の上で存在を主張していた。王冠はあまりに大きく、子どもの頭に似合うものではない。リクは壇上の端に座り込み、指先でその縁をたぐった。指先に伝わる冷たさが、自分がここに立つ理由を鋭く思い出させる。

「戴冠式を進める」と、宰相グレイの声が会場を支配し始めた。彼の周囲には数名の老華族と儀礼の役人。声の奥には微かな笑いが含まれていて、太鼓の音がその合図になった。太鼓は別の場所で始められ、合図に合わせて兵が前進する。リクの胸に、かつて聞いた脅しが蘇る。グレイは兵を盾に、王となる子どもの身体を道具に変えるつもりだ。

「王子様、ここで即位をなさってください。国民のための決断を、今こそ示すのです」

グレイの言葉に合わせて一部の貴族が立ち上がった。賛成の声が波のように広がる。だが壇下に、教員のエルナが立っていた。彼女は小さな紙束をしっかりと握りしめ、肩を震わせながらも目は揺らがない。子ども代表のカンナは教師の横で両手を組み、顔を真っ赤にしている。彼らは先日の公開討論の参加者だ。リクはその二人の姿を見て、欲しいものが何かを再確認した——戴冠式前に、子どもたちを兵役から守る法律を出すこと。

「王子様に届く決断は、王子様自身のものです」エルナの声は震えていたが、そこに逸るものはない。「子どもたちは、行かせないでほしいと自分たちの言葉で言えます。私たちはその言葉を聞く場をここに作るよう求めます」

会場にざわめきが走る。グレイが眉をひそめる。彼はここで、リクを強要してその力を利用しようと考えていた。リクの固有能力——「自分より年下の者が自ら選んだ願いのみ、一日だけ王令として形にできる」——は、戴冠の場で決起の道具になり得た。もしそれが、誰かの「兵役を許す」願いとして使われれば、国家を動かす正当性を与えてしまう。さらに、能力の代償は確実にリクの身体を蝕む。使うたびにリクの年齢は一日進み、誘導すれば暴走する。リクはそれを知っているし、ここにいる誰よりも、力の危うさを恐れている。

グレイは少し間を置き、声を低くした。「王は時に、国家のために重い決断をしなければならない。王子が目の前にいる今、それを示せばよい。王子、命じてください。戦を起こせ。敵は動き出している。早朝の一撃で決着をつければ、多くの者が死を免れる。だが、それには子ども兵も必要だ」

会場からどよめきが上がる。リクの心臓が跳ねる。子どもたちがこの場にいる。彼らの目が、自分の方に注がれている。カンナの唇が震え、小さく「いや」と吐き捨てるように言った。だがグレイはそれを見逃さない。策に長けた男は、眼差しで兵たちに命令を送る。兵の一人が前に出ようとするのを、リクは見た。体が固まる。ここで一度でも、自分の意志で願いを形にすれば、年を一日進める。もしそれが誘導されれば、暴走は止められない。

「王子」と、セレスという中堅の貴族が割って入った。彼はかつてリクに懐柔され、数度の交渉で協力を約束してくれた人物だ。「グレイ宰相、議会の手続きを踏まずに国家を動かすことは、王としての正統性を損ないます。ここは話し合いの場です」

セレスの言葉に、何人かの貴族が頷いた。だがグレイは嘲笑った。「話し合いが役に立った時代は終わった。敵は迫っている。決断は早ければ早いほどよい」

リクは立ち上がった。席の木が軋み、皆の視線が自分に集まる。彼は子どもで、年端のいかない額にはまだ柔らかい曲線が残っている。けれど彼の目には、児童相談員として見てきた現場の影が宿っていた。殴られ、怯え、置き去りにされた子どもたちの顔。彼らを守るために演じているわけではない。その記憶が、ここで自分がとるべき行動の種になる。

「僕は……命じません」リクの声は穏やかだが、会場には鋭く響いた。「僕の胸にあるのは、今ここにいる子どもたちの言葉です。彼らが自分で願いを言ったときだけ、その言葉を王令として扱います。誰かの強制で出た言葉は、僕の王令にはなりません。僕はそれを約束します」

グレイの顔に一瞬、表情が走った。彼はリクの力の仕組みを利用しようとしていたのに、今のリクは明確に拒否したのだ。だが拒否したところで、グレイは手駒を失ったとは思っていない。彼は次の一手を用意していた——偽造された「子どもの字で書かれた戦争宣言」を再び提示し、民衆の恐怖を煽るつもりだった。

その瞬間、壇下でエルナが駆け出した。紙束を高く掲げ、振り向いて叫ぶ。「皆さん、これを見てください! これは子どもの字を模した偽造です! 私たちの学校で調べた結果、紙とインクの年次が違う。筆致も一致しません。これは策動です、誘導です!」

会場に緊張が走る。ミロと呼ばれる軍の隊長が前に出て、紙を受け取った。彼は冷静に文字を眺め、指でなぞった。会場の大理石に、ぽつりと息が落ちるように静かな時間が落ちた。ミロは顔の筋肉を引き締め、兵たちに向き直る。「これが偽造なら、命令の正当性はない。命令とは文書だけでなく、正しい手続きを踏まねばならない」

グレイは顔色を変えて、控えの役人を見た。「その書類は公文書だ。改ざんなど許されない」

「公文書かどうかは、ここで確かめる」とリクが答える。「公開で検証しよう。文書学者と筆跡鑑定、紙の成分検査をここで行う。真実が明らかになれば、その結果に従っていただきたい」

グレイは拳を固めたが、会場の勢いは変わりつつあった。数名の貴族がそっとセレスの傍らに寄る。群衆の中では、教師や商人たちが我先にと証言台に向かう準備をしている。子どもたちも、震えながらだが列になって近づいてくる。カンナはエルナの手を強く握り、前へ進んだ。

「私は覚えています」とカンナは小さな声で言った。会場は一瞬で静まる。「偽の紙は、夜に誰かが置いた。私はそこで寝ていたのに、朝になったら見つかった。誰かが僕たちを怖がらせようとしてた。……行かないって、僕はずっと思ってた」

彼女の言葉には、そのときの肉付きのある記憶があった。眠りを妨げられたこと、扉の音、足音。聞き取れないほど小さな音も、子どもは忘れない。彼らの語りは、表面的な文書よりも重かった。リクはその声を胸に受け止め、そっと頷いた。

グレイは一気に焦りを見せ、低い声で誰かに指示を出した。だがその声は、ミロの耳には届かなかった。ミロは兵を睨みつけ、静かに命令を下す。「兵士たち、武器を下ろせ。命令が正当であると確認できるまでは動くな」

数人の兵が困惑の表情を見せる。彼らは服従を美徳として教えられてきたが、隊長の冷静さと子どもたちの存在が、彼ら自身の判断を呼び覚ます。武器を下ろす音が床に響いた。会場の空気が、ほんの僅かだが変形するのをリクは感じた。

「グレイ宰相」と、セレスが低く言った。「あなたは君主を操ろうとした。もしあなたが事実を偽り、国を騙そうとしたなら、ここで責任を取ってもらう。法廷に出てもらおう」

グレイは顔を歪めた。彼は一手を残していたと確信している。秘策はまだあるはずだ。視線が壇上の王冠に戻る。王冠の縁には、国家を操るための古い符