陶工

陶工 第24話「第22章」

朝の空が硫黄色に染まっていた。灰混じりの風が窯場の藁屋根を鳴らし、遠くで火の精霊が咆哮を上げる。アカリは陶土の入った布袋を抱え、息をつかずに村の中央広場へ向かった。背中には絆の赤い布を巻いた仲間たちが続く。空気は熱く、しかし彼女の掌はそれを確かめられなかった。指先はいつもより鈍く、熱の有無を判断することができない──それでも、やるべきことは決まっていた。

朝の空が硫黄色に染まっていた。灰混じりの風が窯場の藁屋根を鳴らし、遠くで火の精霊が咆哮を上げる。アカリは陶土の入った布袋を抱え、息をつかずに村の中央広場へ向かった。背中には絆の赤い布を巻いた仲間たちが続く。空気は熱く、しかし彼女の掌はそれを確かめられなかった。指先はいつもより鈍く、熱の有無を判断することができない──それでも、やるべきことは決まっていた。

「ここに並べるのね、まっすぐに?」と、技術者のジロウが地面の窪みを指でなぞった。彼の指先は石でできた定規のように正確だ。ジロウは堤防のために溶岩の流路を変える計算を立て、アカリの器をどの線に沿って置くかを決めていた。彼の横で、火祭りの継承者リコが窯のふたを押さえながら小さくうなずく。子どもたちを率いるトーマは、目を真っ赤にして列の整理をしていた。

「私が渡す土だけが、器にあなたたちの言えないことを焼き付ける。渡された人が望めば、その器は悲しみを分ける。消すことはできない。壊したら……壊れた感情は暴れる。私の手は熱を感じなくなる。わかってるよね?」アカリは平らな声で言った。声は震えなかったが、言葉の最後で彼女の掌が少しだけ震えた。仲間たちの顔に、瞬間の戸惑いが走る。

「わかってる」とリコが答えた。「でも、放っておくと溶岩が村を呑んでしまう。あなた一人に負担をかけるつもりはない。共同でやる、って言ったじゃない。」

「共同で、だね」ジロウが手を握り返す。トーマはまだ子どもらしい無邪気さを残したまま、真剣な眼差しだった。「おばあちゃんも手伝うって。あの手だって、もう年寄りだけど、土を受け取ることならできるって言ってたよ。」

アカリはにわかに笑った。乾いた笑いだったが、仲間のその言葉で胸の重さが少し和らいだ。彼女は布袋から小さな塊の土を取り出し、一つをトーマの手のひらに置いた。土は冷たく湿っていた。アカリは手渡すときに目を閉じ、相手の胸にある言葉にならない声を探すように集中する。

土が彼の掌を温めると、陶肌の上に微かな線が浮かび上がった。黒曜のような模様が、波紋のように広がる。模様はトーマが口にできない恐怖と、昔自分を守ってくれた母の笑顔を同時に映したようだった。トーマはそれを見て顔をしかめたが、土を受け取ることをやめはしない。

「これ、消えるの?」トーマが囁く。

「消えない。分けられるだけ。あなたが自分で持つか、誰かに預けるかを選べる。強制はしない。」アカリは言葉を選んで答える。選択を尊重することが、彼女のつくった約束だった。

作業は手早かった。アカリは一人一人に小さな塊の土を渡し、その場で器づくりを教えた。彼女自身が轆轤を回すのではなかった。器は受け取った者が自分で形を作る。アカリの力は「手渡した土」にだけ作用する。だから彼女は土を直接渡す――そのたびに掌が鈍くなり、呼吸は浅くなる。共同作業の列は「土渡しの列」として続いた。老若男女が輪になり、ひとつひとつ自分の器を作り上げていく。

窯から、いつもの──いや、いつもよりもっと不思議な音が聞こえ始めた。低く、規則正しい、子守唄のような音色だ。誰も歌っていないのに、窯の熱せられた土が鳴っている。アカリはそれを聞いて身体の奥にある古い記憶のようなものが疼くのを感じた。窯だけで鳴る子守歌。それは、私たちが皆でやるべきことを忘れないように、窯が代わりに歌っているように思えた。

「その音、気持ちを落ち着けるね」とリコが囁く。「昔母が教えてくれた唄に似てるって、みんな言ってるよ。」

「うん。並べるときはそのリズムで行こう」ジロウが指先を鳴らしてリズムを取り始めた。作業は踊りのように整い、村人たちは自然にそのテンポに合わせて器を持っては運び、置いていった。子守歌は窯の中でしか鳴らないはずなのに、なぜか作業の足並みを整える合図になった。

アカリはひとつの場所に目を止めた。そこには灰に埋まった古い手形があった。灰の中の手形は、以前誰かがここで頑張った痕跡だと直感させた。手形は溶岩の通り道を示すかのように、幾分か一直線に並んでいる。ジロウがその手形に指を合わせ、驚いたように眉をひそめる。

「これ、以前の堤防の跡だ。過去に誰かがここで溶岩を誘導しようとしたんだ。場所が一致する。」ジロウの声に緊迫が混じる。「もしここに器を並べれば、流路を少しでも変えられるかもしれない。」

「手形は、誰かが灰を押し付けたときのものだろう」リコがつぶやく。「過去の抵抗の証かもしれないわ。」

アカリは黙って頷いた。灰の手形は彼女にとって計画の指針になった。そこに自分たちの器を並べる。悲しみを器に込め、器を集めて溶岩の流れを誘導すれば、村は守れる──そう信じるしかなかった。

だが、黒い影が丘の上に現れた。旗は黒色の杯の紋を描いていた。黒い杯──そのしるしを見たとき、村人の何人かが顔色を変えた。イングの旗だ。彼は自らを守り手であると宣言しながら、実際には管理と統制を広げる男だった。この黒い杯は、彼の名を刻む紋章だった。

「来たか」ジロウが低く言う。丘の上から将兵が降りてくるのが見えた。彼らは規律正しく、精霊を従わせるための装置を肩に載せている。装置は小さな鐘のように振動しており、触れたものの熱の振る舞いを乱す仕組みを持っているらしい。兵員の一人が、白い布を振って合図を送る。

前衛の一隊が村の入口で立ち止まり、代表が声高に命令を下した。「村は我らに協力するように。器は提出しろ。安全管理のために、すべてをこちらで預かる。我らの指示に従えば村の安全は保障される。」

「預ける?」リコが顔をしかめる。「それは彼らの言う『安全』という名の統制よ。器を渡してしまえば、悲しみは管理され、声は整えられる。あなたたち、彼らが記憶を『整備』するって言ってるのを聞いたでしょ?」

「整備なんて許さない」トーマの声が震える。「あの人たちに僕たちのものを渡せないよ。」

代表は冷たく笑い、黒い杯の旗をなびかせた。「話し合いは無駄だ。時間がない。今は我々の装置が必要だ。器が役に立つのはただ一度、制御に使われるときだ。」

アカリはじっと旗手を見据えた。彼女の掌が再び鈍りを見せる。土を渡すたび、感覚は薄れていき、今や熱もしみこむ感触も区別がつかない。だが、彼女は土を手渡すのをやめなかった。群れの中から一人の老女が前に出て、しわだらけの掌でアカリの手を握った。

「私の器は私のだ。あなたの言う管理のために渡すものかね?」老女は言った。「私の若いころにも、ここで誰かが似たようなことをやった。灰の手形があるのに、どうして外の者に任せるんだ。」

アカリは老女の掌に土を渡した。その瞬間、彼女は老女の抑えきれなかった喪失を見た。老女は子を火に奪われたのだ。悲しみは濃く、ぶつかるように広がった。模様は深い裂け目を描いた。老女はそれを見て緩やかに涙を落としたが、声は出さなかった。彼女はその器を胸に抱え、首を振って拒否の意思を示す。

「よし、私たちは預けない」アカリは答えた。「共同で置く。選ぶのは自分自身。誰かに奪われることはない。」

作業は舗装された秩序の中で進んだ。器は列を成し、溶岩の流路を囲うように並んでいく。ジロウは堤防の弱点を計算し、リコ