楽器店で交換留学生は誰にも言えない失敗を分け合う

楽器店で交換留学生は誰にも言えない失敗を分け合う 第10話「第9章」

夜の楽器店は、昼間とは別の匂いをしていた。ロウと古い木の匂いと、埃を掻き出す箱の中で眠っていた弦の油。蛍光灯が一つ、白く薄く震えている。掲示板の近くのカウンターには、小さな監視用モニターが置かれ、赤いLEDがぽつりと点いていた。モニターの画面には、表通りの掲示板と、その前を通る人影がいつも通りの速度で映っているだけだが、いつもより目が泳ぐように感じる。

夜の楽器店は、昼間とは別の匂いをしていた。ロウと古い木の匂いと、埃を掻き出す箱の中で眠っていた弦の油。蛍光灯が一つ、白く薄く震えている。掲示板の近くのカウンターには、小さな監視用モニターが置かれ、赤いLEDがぽつりと点いていた。モニターの画面には、表通りの掲示板と、その前を通る人影がいつも通りの速度で映っているだけだが、いつもより目が泳ぐように感じる。

「映像、見られてるね……」と、陽菜が小声で言う。彼女はポスターの縁を指で撫で、指先に残った紙屑を嗅いでいた。彼女の手にはまだ、先刻使った糊の匂いが残っている。

店の奥では、理玖が古いギターのネックを外し、ボディの亀裂に細い木片を埋め込んでいた。高瀬は調整用のルーペを顔につけ、糸鋸を静かに動かす。店主の木下は、レジの陰から彼らを見回し、時折耳にかけていた補聴器を触っていた。あのモニターを見ないふりはもうできない。

アンナは、作業台の端に腰を下ろしていた。彼女は初めてこの店に入ったとき、壁一面の楽器に圧倒された。今はそのうちの一つを「共同制作」の媒体にしようとしている。共同制作——彼女たちが秘かに使う方法だ。二人以上で同じ物に手をかけ、同じテンポで息を合わせると、そこに「痕跡」が残る。痕跡は誰かの本音をそのまま吐き出すものではない。色や匂い、微妙な振動の癖として、後から触れた者の心に小さな震えを与えるだけだ。それを使えば、言葉にしづらい失敗の重さを分け合うことができる。だがルールがある——痕跡を「これだ」と断定してしまうほど、その痕跡は目に見えなくなる。共同制作を急ぎ、形だけ整えようとすると、素材が割れてしまう。

「今日、掲示板に置くんだよね?」理玖が首を上げる。木の削り屑が彼の髪に一片くっついた。

アンナは頷いた。「あのカバーの下に入れて、目立たない音だけでも残す。音声ファイルじゃなくて、木の鳴り方。誰かが手に取って弾いたとき、あの時の重さがわかるようにするの。」

陽菜は唇を噛んだ。掲示板には、生徒会が目を光らせていて、貼り出しはすぐにチェックされる。相河颯斗——生徒会長の名前が、夜の校内の図面のようにアンナの中で冷たく浮かんだ。彼は「秩序」を守る名目で掲示板の規制を強めていたが、彼が動く理由はそれだけじゃない。店の奥で木下が低く呟いた。

「相河さんが頻繁に映像をチェックするようになってから、掲示板の貼り紙が変わった。単なる注意喚起ならいいが、個人を追い詰める内容は消される。あいつがあの位置にいるのは、過去のゴタゴタを隠したいからだ。」

「隠したい過去って……?」高瀬が眉を寄せる。糸鋸を止め、彼は指先でギターの弦を軽く弾いた。音が、店の四角い空気を揺らした。

アンナはギターのボディを手のひらで包む。冷たい、よく磨かれた木の感触。そのうちに、自分が何度も失敗した夜、言葉にできなかった瞬間が波のように胸に迫ってきた。能力を使うとき、彼女はいつもそれを味わう。共有するということは、失敗の一部を誰かに渡す代わりに、自分も相手の痛みを少し受け取ることだ。代償は言葉にならない欠落であり、彼女はそれを恐れていた。

だが今、やらなければならない。誰かが自分の同僚を切り捨て、噂と評価で人を消していく。アンナは息を吐いた。「慎重に、ゆっくり。急がないで。リズムを合わせるんだ。」

理玖と陽菜はこちらを見て、小さく頷いた。四人は肩を並べ、同じ一拍で手を動かし始める。糊を刷毛で伸ばし、木片を正しい角度に差し込み、表面をゆっくりとヤスリで磨く。息の長さ、指の圧、息遣い——それらを揃えると、木は微かに違う音を返してきた。痕跡が生まれ始める。その瞬間、アンナは喉に味わったことのない金属の味を感じた。過去の夜、謝るときに使った言葉の輪郭が、薄く揺れる。

「大丈夫?」陽菜が囁く。彼女の手がアンナの背中に触れ、やけに暖かかった。

アンナはほんの少し笑った。「大丈夫。覚悟がある。」

共同制作は尺を取る。彼らは一時間、二時間と静かに作業を続けた。夜が更け、店の外の街灯が車の窓を淡く照らす。やがて、木の継ぎ目は目立たなくなり、ネックはしっかりと嵌った。理玖が最後に弦を張り、音を確かめた。

「弾いてみる?」高瀬が言った。店の中に静けさが戻る。アンナが右手で軽くローポジションのコードを押さえると、ギターが古い夜の匂いを伴って鳴った。音は柔らかく、でもどこか重心が低かった。演奏を終えると、四人はしばらく動けなかった。木の鳴りには確かに何かが沁みているようだった——誰かの不器用な後悔。言葉にしにくい形で。

だが、その瞬間、理玖の表情が固まった。「これ、何かに似てる……」彼は弦をなぞりながら呟く。その口ぶりは好奇心から出たものだったが、まるで痕跡に意味を貼り付けようとする手つきに見えた。アンナの胸が冷たくなる。ルールに触れる瞬間が近づいていた。痕跡が「これだ」と決めつけられると、消える。直感が警告を送る。

「いや、そうじゃないよ。確かめないで、ただ感じて」と陽菜が急いで言い、理玖の手を取った。だが焦りは毒だ。理玖は無邪気に、はっきりしようとしただけだった。高瀬は眉を吊り上げた。「ここで議論しても仕方ない。掲示板に移そう。」

彼らはギターを布で包み、掲示板のカバーの裏に隠すようにして差し入れた。掲示板の正面には「楽器店からの連絡」とだけ小さく紙が貼られ、見た目には普通の掲示物だ。カメラの赤いLEDは、彼らの動きを追っていた。アンナは心の中で何度も念じた。「急がないで。急がないで。」

その夜の記録は、誰かの手で削除されたわけではなかった。だが翌朝、木下が出勤して掲示板を開けると、カバーの裏に入れておいたギターは、かすかに亀裂を生じていた。二十センチほど、深くはないが確実な線。共同制作が「急ぎ」で壊れた瞬間だった。夜に彼らが合わせた呼吸の中に、まだ不協和音が残っていたのだ。

「なんてこった……」木下は自分の工具箱を叩き、ため息をついた。「誰かが触ったのか、それとも材が弱かったのか……」

その日の昼過ぎ、アンナたちは密かに店のバックルームに集まった。掲示板のカメラの録画がどこに保存されているのか、木下に尋ねるためだ。モニターの裏の配線は迷路のようで、埃まみれの録画装置が棚の下に押し込まれていた。木下が古い鍵でロックを外すと、装置はかすかに唸ってフォルダの一覧を吐き出した。

「ログはここに残ってる。だが、相河はね、自分が手を加えやすいように一部だけ抜き出して閲覧するクセがある。つまり、表に出る前に彼が見て消してる可能性が高い。」木下の声は低い。

陽菜がモニターに顔を近づけ、古い日付のファイルをスクロールした。画質は粗く、時間は一年前、二年前と遡る。街は季節を変え、制服も少し変わる。だがある日付で、画面の中の若い人影が止まった。時間が歪んだように、皆の呼吸が詰まった。

モニターに映っていたのは、数年前の学祭の日。薄暗い廊下に、相河颯斗に似た一人の生徒が写っている。彼は掲示板の前に立ち、長い紙を破り捨てるようにして、何かを隠している。隣にいたのは、当時のクラブ部長と見られる顔だ。映像はぎこちなく、削除の痕跡を消せば残るノイズのように揺れていたが、確かに「誰かの