星見寮で幼なじみの編集者は一通の手紙を追いかける
一通の手紙が、選択と記憶の在り方を問い直す。
あらすじ
深谷漣は星見寮に暮らす編集者で、幼なじみたちと共に共同制作の場を守ってきた。ある朝、門に突き刺さった差出人不明の手紙──「選べないことが怖い」という五つの文字──を見つけたことから物語は動き出す。漣は「共同痕跡」と呼ばれる、二人で作ったものにだけ残る感情の層を読む能力を持つが、それを使えば相手の選択や記憶が薄れるという代償がある。封筒の銀色のピンや古い折本、共同制作物の痕跡を辿るうちに、寮内の評点制度や公的記録が私信を取り込み、人々の選択を狭めていることが見えてくる。漣は幼なじみや仲間たちと対話と共作を重ねながら、手紙の出所と意味を追い、個人の意志を守るか制度に立ち向かうかという難しい選択に直面する。静かな工作や夜の屋上、読書会誌や折本に宿る細やかな描写を通じて、記憶・選択・共同性の重なりをめぐる倫理的な葛藤が描かれる作品です。