屋上菜園で正反対のふたりは同じ夢を選び直す
手が残す痕が、選ぶことを問う
あらすじ
高校の屋上菜園を舞台に、水瀬葵と相良律という正反対の二人が共同で作る手仕事を通じて関係を紡ぐ物語。屋上にだけ現れる「共痕」と呼ばれる、共同制作物に残る痕跡は他者の感情や記憶の断片を宿すが、それを制度や評価に読み取られ数値化しようとする動きが持ち上がる。生徒会や学校、管理組合、外部機関からの監査や撤去命令が迫る中、葵たちは屋上と仲間を守るために証拠を示すか、場を開いて共に作るか、あるいは制度の仕組みを暴くかという選択を迫られる。触覚や土の匂い、木札や壊れた陶器といった具体的な手作業の描写を通して、信頼と可視化、監視と自治の葛藤が丁寧に描かれる。読む人は、共同の痕跡が示す微かな温度と、その扱いによる代償をめぐる倫理的な判断の重さに引き込まれるだろう。