夢を税にする司祭は愛した人を裁く

夢を税にする司祭は愛した人を裁く 第12話「第11章」

法廷は鉛色の朝を飲み込んだように静かだった。石張りの天井から下がる古い燭台は、真鍮の脂をこぼすようにゆらめき、遠い記録機器の低い唸りが空気を震わせる。アレンは木の柵に手を置いた。指の腹に触れるざらつきは、いつだったかミアが編んでくれた手袋の縁のそれと同じはずだったが、今は確信が持てない。手首に巻いた絹の細い糸が暖かい。ミアの香りを残そうと彼が最後に託したものだ。だがその香りも、記憶のある一部とともに薄れていくと自分で分かっている。触れているのに、何かを思い出せない焦燥が胸を絞った。

法廷は鉛色の朝を飲み込んだように静かだった。石張りの天井から下がる古い燭台は、真鍮の脂をこぼすようにゆらめき、遠い記録機器の低い唸りが空気を震わせる。アレンは木の柵に手を置いた。指の腹に触れるざらつきは、いつだったかミアが編んでくれた手袋の縁のそれと同じはずだったが、今は確信が持てない。手首に巻いた絹の細い糸が暖かい。ミアの香りを残そうと彼が最後に託したものだ。だがその香りも、記憶のある一部とともに薄れていくと自分で分かっている。触れているのに、何かを思い出せない焦燥が胸を絞った。

「アレン」——ミアの声は、法廷の奥の被告席から低く響いた。声帯の震えや、驚くほど小さな笑いの癖があったはずだ。アレンはそれを求めて唇を噛んだ。どうして臆病になるのか。彼は司祭の職にある。真実を紡ぎ、責めるべき者を責めるためにここに立っている。

「始めていいか」ローザが囁いた。彼女はアレンの右肩に立ち、手のひらで彼の背を一度押した。サイロは視線を床に落とし、まだ決意を固められない者の顔で彼を見た。外の都では既に、夢税に抗う小競り合いが起きている。ここでの一撃が、都市全体の眠りを揺さぶることをアレンは知っていた。

彼は深く息を吸い、司祭の古い印章を取り出した。掌にあるのは冷たい金属の環で、それは彼の能力の触媒だった。能力は名前を持っていない。彼らはただ「綴り」と呼ぶ。個々の夢に刻まれた残酷な断片を、当事者たちの証言として束ねる術。だがその束ねは、いつも彼の内側から何かを摘み取る。代償は記憶の欠片。強く紡げば紡ぐほど、愛した者についての記憶が薄れていく。さらに忌むべきは、彼がその証を以て強制的な救済を行ったとき、呪いは逆に増幅するということだった。

「証言を紡ぐ」——アレンは呟いて環を額に当てた。冷たさが額の皮膚を刺すと、視界に薄い糸が生まれた。白い糸が天井から降り、被告席の周りを何重にも巡る。糸は、ここにいる人々の眠りに残る記憶の端切れを撫で集めるように動く。最初の断片が空気を裂き、薄暗い映像として浮かび上がった。小さな子供の背中に手が伸びる。暗がりで誰かが囁く。ある男が懐から夢徴収の小さな器具を出す。映像は冷たく、観衆の肺を凍らせた。

被害者たちの証言が、まるで古いフィルムのコマのように連なっていく。民衆の前で共有される「当事者の証言」——それは敵対者の偽りを白日の下に晒し、統治の嘘を暴く力を持っていた。だが糸が折れ、証が完成するたびに、アレンの胸の中で何かが音を立てた。最初は微かな割れ目の音のようだった。次の証が紡がれると、彼は空洞になった記憶の場所を指で探した。橋の上での夜、二人で食べた薄茶の温度、彼の肩に寄せた小さな頭の重さ。触れられるはずの感覚がふわふわと彼の指先をすり抜けた。

「止めてくれ、アレン」サイロが叫んだ。声はほとんど呻きに近かった。「強制するんじゃない。呪いは拡がる!」

だがミアは、その目でアレンを見ていた。瞳の色が彼の手に残る最後の輪郭をたぐり寄せる。彼女の表情は静かで、痛みを耐える者のそれだった。被告席に敷かれた粗布の上で指先が小刻みに震える。彼女は口を開き、低く言った。

「私を裁いてください。あなたに、私の罪を見てほしい。自分で決めたんです、アレン。あなた以外にはできない。」

その言葉を聞いたとき、アレンはそれが意味することを身体で知った。自らの裁きを請う者がいること。愛した者が、自分の手で裁かれることを望むこと。その望みがどれほどの罠を含んでいるかを彼も知っていた。強制的に救済すれば、呪いは跳ね上がる。だが拒めば、彼女の意思を踏みにじることになる。

彼は掌に集まる糸をさらに強く引いた。映像は濃く、痛切になった。ある男が夢徴収器を押し付ける。ある女性が寝床で何かを叫ぶ。映像が一つに固まると、観衆の顔に色が引かれ、数人がしゃがみ込んだ。ローザが顔を伏せる。アレンは気づいた。自分が糸を引くたびに、絹の糸のように彼自身のミアにまつわる太い記憶がほどけていく。最初に失われたのは小さなことだった。ミアが朝に髪を結わいていた方法。次に、彼女が好きだったパン屋の名前。次には、彼女が壁のしみを見て笑った理由——それが消えた瞬間、彼は笑いの形すら思い出せなかった。

「お願い……」ミアの声が掠れる。アレンはふと、自分の手の中にある小さな銀貨を確かめた。それはミアの名を書いたはずの刻印があった。今はただ無地の円だった。記憶が刻印を剥がしていった。

一連の証言が完成し、法廷は静まり返った。アレンは裁定のために口を開こうとしたが、言葉が滑った。名前が出ない。ミアの名の端が欠けていたのだ。彼は必死に喉を鳴らし、名前を探したが、響きは空虚だった。被告席の女が、涙を一粒落とした。

そのとき、外の空気が変わった。重い振動が石畳を這い、法廷の窓を震わせた。誰かが郊外の夢徴収塔で機構を起動させたのだ。夢の纏めが強制的に解かれ、呪いの網が都市の眠りを掻き回す。遠くの屋根の上で、人々が目をつむったまま呻き、窓ガラスに白い指跡が浮かんだ。法廷の外に置かれた小さな監視鏡が、異様な映像を吐き出す——無数の夢の断片が都市上空で絡まり、暗闇の中で波打っていた。

「やったな、総督ヴェルクの一手だ」ローザが唇を噛んだ。「あなたが強制した瞬間に、彼らは増幅の基点を引いた。都市の眠りは今、暴走の渦の中にある」

アレンの胸を突くのは、呪いの増幅だけではなかった。自分の犠牲が既に遅かったことを知る焦燥、そして失われつつある人の姿が現実のものから遠ざかっていく恐怖。彼は記憶の欠片を手繰り寄せようとしたが、手の中はもう空っぽだった。ミアの口元にあった小さなホクロの位置すら曖昧だ。指で自分の唇を撫でてみると、唇の奥に残る熱の記憶まで消えている。

「止める方法が一つある」サイロが低く囁いた。彼は法廷の控えから古いフィルム箱を引きずり出した。埃をはたくと、薄い金属板が光を返し、その中央に手書きの文字があった——《結帯協約:返還の条》。誰もがそれを一度は伝説として聞いたことがあるが、真実を見た者はほとんどいない。アレンはその文字に指先を置くと、ひんやりした冷たさが掌を貫いた。

「返還の条は、夢徴収の根幹だ」とローザが言う。「協約は、夢を取り戻すには『生きた証人』の自発的同意が必要だと明言している。強制は反転を許さない。だが同意があるなら、徴収を逆にして『返還』できる。人民に選択を与えることができる——税を税ではなく、『参与』に変えるための唯一の鍵だ」

言葉が法廷に落ちた瞬間、アレンの胸の中に薄い光が差したように感じた。返還には生きた証人の自発的同意が必要。だがそれは同時に——その証人自身が大きな代価を払うことを意味していた。古い記録には、証人は自らの夢と名前の一部を差し出すことで、徴収機構の逆回転を可能にする、とあった。すなわち、取り返すために誰かが自分の存在を小さくすることになる。

ミアがゆっくりと立ち上がった。彼女の足は震えていたが、その瞳には一種の決意が宿っていた。アレンは再び彼女の顔を見ようとした。けれどもそこにあるのは輪郭だけで、色彩のない肖像画のようだった。

「私が……私が証人になります」ミアは言った。声は震