王女騎士

王女騎士 第24話「第22章 盟誓と鍵」

暗闇の中心で、輪が回った。

暗闇の中心で、輪が回った。

王都地下深く、巨石で組まれた天井から幾重にも吊られた環状の機構――位環(くらいかん)は、ほとばしる光の帯を吐いていた。光は床に敷かれた紋理をなぞり、人の影を裂いていく。装置の鼓動は低く、重く、周囲の空気を絞るようにして所有者の歴史を啜り上げる音を立てていた。

ミアは徽章を握りしめ、装置の前に立っていた。徽章の小さな歯車は冷たく、だが確かな重みを帯びている。リサが短く息を詰め、エリナがミアの手を強く支える。ミロは祭壇の端で膝を折り、口の中で古い節を確かめていた。サイムとカエルが人の壁を作り、倒れた仲間たちを守っている。

「時間はない」とエリナが言った。声は震えていない。震えは彼女の胸の奥にあるだけだった。

聖締の残党が最後の抵抗を試みて、扉の向こうで鉄の擦れる音がした。だがここで止めねばならない。位環は既に全国の位を攫い始めている。人々の選択可能性を、記憶と生の重みによって縛りつける歯車が回っている。

「ミア、どうするんだ」カエルが低く問うた。敵はすり抜けられないように、扉の向こうで待ち構えている。外に出れば戦線は再び拡散する。ここで止めるしかない。

ミロが顔を上げ、ぬれた目で言った。「俺の術と、彼女の盟誓を合わせる。徽章を鍵にして、位環の結線を断てるはずだ。ただし――代価は大きい」

「大きいって?」リサが問い返す。彼女の手は微かに震えている。解析器具にある細い裂け目から、冷たい蒸気が立ちのぼるように見えた。

ミロは小さく笑ったように聞こえない音を出した。「俺自身の記憶の一部。儀式は、装置に埋め込まれた『情報の鎖』を送る。それを断ち切るには、術者もまた一節を差し出さねばならない。俺は引き受ける。だがそれだけでは足りない。ここにいる全員の『生体流』――記憶と活力の波を一つに集めて、位環のコアにぶつける必要がある」

ミアは徽章を見下ろした。金属の表面に、いつの間にか盟痕の光が映っている。盟痕――盟誓を行うたびに刻まれた痕が、彼女の身体に小さく浮き上がっている。盟痕は誇りの証でもあるが、同時に敵に狙われる弱点でもある。ここに刺し込めば、装置と直結する回路を作られるかもしれない。だが今、ほかに方法はない。

「私がやる」とミアは言った。言葉の端は震えていなかった。ただ、喉の奥に固い結びがある。

エリナは目を細め、ぎゅっとミアの手を握り返した。その瞬間、ミアの中で鮮やかな像が浮かんだ。エリナの幼い頃の笑い顔。だが次の瞬間、像は砂のように零れ落ち、何かが欠けた。ミアは思い出そうとしたが、そこにあった名が滑り落ちた。名前が白紙になったのを、ミアははっきり感じた。

盟誓の条件はいつも通りだ。声に出すこと、相手の名を宣言すること。三十歩以内の近接。手が触れるか、誓印で認証すること。今夜はそれが、世界の重さを一つに束ねるための手順になる。

「行くよ」とミアは言った。最初に選ぶのは、エリナだった。彼女を守るために転生した――その理由が、ここで意味を持たなくてはならない。

ミアは深く息を吸い、声を震わせずに呟いた。「守る、エリナ・ヴェル」

エリナは瞬時に眉を寄せ、だが微笑んだ。そして二人は互いの手を重ねた。触れ合いの瞬間、徽章が微かに温かくなり、ミアの体内に稲妻のような情報の流れが走った。エリナの痛み、疲労、そして記憶の小さな簾(すだれ)が、ミアの中へと滑り込む。ミアはそれを一つの塊として受け止め、内側で整理する代わりに押し込む感覚があった。

痛みが来た。鋭く、過去の傷を再演するように。ミアは身をよじる。盟誓の代償が作動する――肉体年齢が一歳分進む。膝の軋み、背筋の痙攣、白髪の一本。指先がふるえ、彼女の視界の端で何かがぼやけた。

同時に、記憶の一つが消えた。ランダムだった。ミアは自分の胸がひんやりするのを感じた。消えた記憶――前世の小さな日常、夜間巡回の匂い、ある夜に聞いた古い歌の一節。確かな喪失感が胸を刺し、彼女は喉を鳴らした。だが口に出すことはできない。ここで躊躇すれば、位環に余裕を与える。

次に、リサに向けて言葉を放った。「守る、リサ」

リサは戸惑いの後にうなずき、二人の指が触れた。リサの治癒の知識が波紋のようにミアに流れ込む。ミアは受け止め、それを所定の位置に導くように意識を集中した。リサの苦悶、過去の失敗から学んだ技術、患者の顔。ミアはそれらの感触を、装置へ向けるエネルギーの一部として使う。

一つ、また一つ。ミアは盟誓をつないでいった。エリナ、リサ、カエル、サイム――近くに倒れている数人の負傷者にまで誓いを伸ばした。条件を満たすために、誓印は全員が手元に出していた。誓印が光るたび、ミアの身体に冷たい刻印が増えていく。盟痕の輪郭がはっきりと浮かび上がり、そこから微細な電流のようなものが走るのを、ミアは感じた。

「五人目です」「六人目です」とサイムが数を拾う。彼は淡々とした口調で、戦略的に人選を助けた。殿(しんがり)に残すべき者、術式で必要な記憶を持つ者を選ぶ。だが誰一人として強制はされていない。盟誓の禁止は有効だ―人の意思を奪うことはできない。皆、自分の意思で手を差し出している。

ミロは祭壇の上で口を動かしていた。古い言葉が空気を震わせる。彼の節は、位環の符号化されたパターンに合わせるための調律だった。ミロの声に合わせて、徽章の歯車が微かに噛み合い、装置の縫い目がずれる。

だが位環は抵抗した。装置の光が一瞬、鋭い噴水のように跳ね上がり、近くの空気を切り裂いた。聖締の護り手たちがそれを好機と見て攻勢をかける。彼らの剣がミアへ向かった。敵は盟痕を見ている。盟痕は弱点だ。そこを狙えば、ミアの内に取り込んだ力をぶちまけるか、最悪は装置と直結して逆流を作るかもしれない。

「奴らが来る!」カエルが叫び、盾を構えた。鉄と肉のぶつかり合いが始まる。サイムは遠目から矢を放ち、リサは簡易的な防壁を作る。仲間たちはミアを守るべく刃を振るう。

敵の一人が近づき、盟痕の位置を狙って剣を振るった。ミアの肩に瞬間的な痛みが走り、彼女は呻く。盟誓の効果で痛みは彼女の中に留まる――そしてそれは外方へと導かれていた。ミアはその痛みを押し込み、それをエネルギーへと変換するように意図した。だが敵の刃は無慈悲で、盟痕付近に深い切り傷を作った。そこから放たれる血が、光の流れと混ざり合って赤い糸のように空中へ吸い込まれていくのが見えた。

「誰も、私を止めるな」とミアは強く言った。言葉は息のように薄く、だが鋼の芯を持っていた。仲間たちは一瞬固まってから、さらに前に出た。彼らはミアの「守る」意思を尊重した。

盟誓は強力だが単独では装置を止められない。ミロの儀式が、徽章で栓をする物理的な解除線を開く。ミロは歌を続ける。詩句の一つ一つが、自分のなかの記憶を燻(くす)ぶるように燃やしていく。彼の顔から色が失われ、瞳が遠くを見た。リサは片手でミロを支えようとするが、ミロは首を振った。

「やらせてくれ。これが俺の――」ミロは言葉をつぶやき、そこで言葉が止まった。術は膨大なデータ流を扱うために、術者の主体性の一部を装置に渡すことを要する。渡すものは記憶かもしれない、感情の結びつきかもし