王女騎士

王女騎士 第20話「第十八章 亀裂を縫う夜」

ミアは窓辺に置かれた地図の薄い折り目を指先でなぞりながら、何を手に入れなければならないかを静かに反芻していた。王都へ至る路線図。聖締が動かしている部隊の動線。断片的に見つかった「環」の図。そして、その中心に刻まれた図形——徽章の小さな歯車と寸法を示す線。

ミアは窓辺に置かれた地図の薄い折り目を指先でなぞりながら、何を手に入れなければならないかを静かに反芻していた。王都へ至る路線図。聖締が動かしている部隊の動線。断片的に見つかった「環」の図。そして、その中心に刻まれた図形——徽章の小さな歯車と寸法を示す線。

「我々が必要なのは位置の確定だ。制御室の正確な座標と、そこへ入るための物理的な条件。文書か図面か、あるいは現場を見た者の証言——どれか一つでも確かめれば動ける」

ミアは短く言った。声に含まれる冷静さは、彼女が夜間警備の夜を何度も歩いた者のものだった。だが、その瞳の奥には疲労と、何かを失うことへの怖れが少しだけ滲んでいる。盟誓の代償は常に手元にあった。盟痕の生々しい縁が、右手の甲にうっすらと残っている。暗がりの中ではわずかに紫がかった光を宿し、皮膚の下で小さな振動を繰り返していた。

「接触の場所は旧倉庫区、聖締の下部組織が物資の受け渡しに使っていると、我々の内通者が言っている」サイムが地図に薄い線で印を付ける。彼の顔はいつものように仄暗く、眉の端に小さな皺が刻まれている。文書偽造の専門家であると同時に、情報の価値を測る冷徹な眼差しを持っていた。

「内通者って、本当に信用できるのか」カエルが低く呟いた。重装甲の男はいつも戦場を最優先する。疑念があるのは当然だと彼は思っていた。

「内通者は内部にいるが、聖締内部は完全に統一されていない。ある一派が装置の危険性に気付き、これ以上の制御を嫌がっている。彼らを突く。それだけだ」ミロの声はいつもより静かだった。彼は占い師の風体を保っているが、今夜はその薄布の下に隠された過去の重さを隠すことができなかった。ミロは聖締の一員を知っている。知っているだけでなく、かつて近しい立場にいた痕跡が彼の仕草や言葉の端々に残る。

「条件は?」リサが尋ねる。小柄な薬師は、資料を扱うときの丁寧さと、現場での迅速さを併せ持つ。彼女の手は既に小さな器具を受け渡す準備をしていた。

サイムが目を細める。「夜、更に薄い時間帯。監視の目が最も鈍る時間帯に偽装搬入を行う。文書保管庫は倉庫区の地下にある。だが、我々が注意しないといけないのは監視の増強だ。摂政側は動きを察しているように思える――何かを警戒している痕跡がある」

ミロが口を開いた。「私が接触する。内通者は私の顔に見覚えがあると言う。だが、もし裏があれば一人で行かせろ。皆を危険に晒したくない」

ミアは彼の肩を軽く押す。「一人で行かせない。あなたの存在は鍵だ。私たちはそれを守る」

その言葉で決まった。彼らは夜の倉庫区へ向かう。目標は情報の奪取――制御室の座標を確定する証拠を手に入れること。もし可能なら、入り口の構造や鍵の形状を記した図面を得ること。徽章が鍵の一部であるかを確かめること。だが同時に、彼らは罠の存在も考えていた。聖締は隙を見せる組織ではない。内部に亀裂があるとはいえ、そう簡単にこちらが得をするほど愚かではない。

夜は湿り気を含んでいた。倉庫区の路地は油と潮の匂いが混ざり、月明かりは薄く雲に遮られている。彼らは歩数を数え、暗がりに身体を馴染ませながら進んだ。ミアの脚はかつての職務が染みついた足取りで、音を立てずに石畳を滑る。彼女の頭の中では、あらゆる出入り口と人の動線が同時に計算されていた。

接触地点は、古びた倉庫の裏手にある小さな出入り口。ミロが先に歩み寄ると、暗がりから一人の影が現れた。顔はほとんど見えない。身のこなしに古い礼のようなものがあり、聖締の下層組織にありがちな傭兵の鋭さは欠けている。彼は囁くように言った。

「ここで受け渡しをする。だが、監視が厳しくなった。総督の命令で倉庫の一部を封鎖している。文書は地下の木箱だ。鍵は三つの工程で保護されている。第一は物理的、第二は符号、第三は生体照合に近い何かだ」

ミロは顔をしかめた。彼の指先が微かに震える。ミアはその変化を見逃さない。

「第三って?」ミアが問う。

影が言葉を落とす。「生体の干渉を必要とする。……昔からのやり方だ。ここで言われる『位』を扱うには、人の糧が要る。だが、我々の中にはそれを違法だと見る者がいる」

その語は風に乗って消えた。ミアは喉元がひりつくような感覚を覚えた。彼らが追っているものの核心が、ここで更に暗い色を帯びている。

「証拠を見せろ」サイムが低く命じる。

影は倉庫の扉に手をかけ、古い木の節を引き剥がすような音を立てる。薄暗い木箱。中には数枚の羊皮紙と、小さな金属片が入っていた。羊皮紙には環の図、微細な記号、そして地下に描かれた円の配置。金属片は小さな車輪のように見え、中心に小さな凹みがあった。ミロの呼吸が止まり、彼はそれを見つめたまま白い息を吐いた。

「こ、これだ。これが……」ミロの声は震えていた。「だが、ここからが危険だ。彼らには監視が戻ってくる。今日の話はこれだけで終わらせるべきだ」

だが、その時、遠くから金属音が響いた。倉庫の向こうで鎧が擦れる音。声が低く命令する。聖締の下部組織が反応したのだ。接触者が顔を上げ、目を大きく見開いた。

「罠だ!」

一瞬のうちに状況は顕在した。倉庫の窓に光が点き、警笛の音が小さく広がる。影は逃げる方向を示し、ミロはたった一つの決断をするために踏み込む。

「行くぞ。接触者が計画の核心だ。私が足を引き受ける」ミロの目はあの日の彼とは違っていた。軽口や占いの皮を剥がした素顔が、仲間に向けられている。

「ミロ、だめ——」エリナが叫ぶが、彼は既に動いていた。接触者を引き留めるため、倉庫の影へと走る。彼の動きはいつもより計算高く、同時に何か甘美な決意に貫かれていた。

背後からの斥候が二人、三人と迫る。銃刃が閃き、弾丸の音が木箱に当たる。サイムが素早く羊皮紙を掻き取り、懐に押し込む。カエルが前に出て鋼で応じ、弾丸を受け流す。だが一つの音がひどく冷たく響いた——接触者に飛来した矢。彼は絞り出すように血を吐き、膝をつく。ミロが叫びながら駆け寄るが、監視が迫る。

「やられる!」カエルの声と共に、二つの影が倉庫の入口を抑えた。逃げ場は狭い。だがミアは判断を下していた。

「サイム、図面を持て。リサ、傷を塞げ。ミロはこっちだ」

命令は短く、全員に行動を促す。サイムは羊皮紙をぎゅっと握り、走り出す。リサは応急用の包帯を取り出し、接触者の横に落ちる。だが接触者の胸からは血が滲み、彼の手は震えていた。

「ミロ!」エリナが飛び出す寸前で、ミロが振り返り彼女の手を振った。そこには決意と、何かを諦めたような静けさがあった。

接触者の顔は薄白く、瞳の中には驚きと恨みが混ざっていた。彼は、聖締にとってはもう用済みだったのかもしれない。あるいは、内部の亀裂がより苛烈な締め付けを招いたのかもしれない。どちらにしても、目の前には負傷者がいる。情報を守るためにも、彼を連れ出すか、その場で止めるかの選択を迫られた。

ミアは躊躇しなかった。彼女は接触者の脈拍を確かめる。そして、声をはっきりと上げた。

「守る。アレン・ヴァルド!」

条件の三つ、彼女はすべて満たしていた。声に乗せて宣言する。接触者の名を口にすること。ミロが慌てて出した小さな誓印を二