月蝕厨房の栄養譜
一匙は、誰かの選ぶ権利を守る。
あらすじ
八歳の少女リネアは、厨房での細やかな仕事に長けた記録者と料理人の協力を得て、父の無実を証明するために動き出す。城の厨房から国境の村、夜市や広場へと歩を進める中で、彼女は「食べること」をただの栄養摂取ではなく、記憶や選択が絡む行為として扱う。前世の夜勤で培った観察眼と配膳の習慣を頼りに、月光茸や黒い粒の痕跡、臨時配給に絡む不穏な痕跡をたどりながら、誰もが「自分で匙を取れる場」を作ろうと奮闘する。城側の権力や穀倉院の疑念、地下から伝わる不吉な唸りといった重圧の中、リネアが守ろうとするのは、人々の選択と食卓をめぐる小さな礼儀である。本作は厨房の匂いと火の光に満ちた描写、料理を介した倫理と政治の交錯、記録の重要性が読みどころだ。