雨都の記録者
雨に滲む一行と、奪われる記憶――名を取り戻す代償。
あらすじ
雨に閉ざされた港町・雨都。孤児院・潮音院で書記官補助を務める蓮司は、濡れた文書から消えた一行だけを一度だけ復元する能力「潮写」を持つ。しかし一行を取り戻すたびに自らの記憶を一つ失うという代償があった。ある日届いた藍の滲む封筒をきっかけに、役所の総録会と秘密の班「濡簿班」が絡む戸籍改竄の疑惑が浮上する。蓮司は仲間たちと共に、濡れた紙片と古い歌、鐘の合図を頼りに「創都の帳」へと迫るが、真実を公にするか、守るべきものを選ぶかという痛みを突き付けられる。雨と藍の匂いが充満する街の細部描写、記録を巡る儀礼と裏の力学、人の名を取り戻すための小さな犠牲が読みどころ。