冬宮の若き執政
声を刻む氷が、記憶を奪う。若き執政は何を守るか。
あらすじ
楠木礼は若き執政として、王都に伝わる「氷版」という声を刻む装置と向き合う。氷版は発声と情動を氷に刻む力を持つ一方で、使用者に代償として記憶の一部を奪わせる。執政庁の老廷吏・茅や護衛の白沼拓海、事務の相模結、解析者の細谷葵、そして硝子片を握る冬灯らと共に、礼は村の集団請願や公開審理、港の倉庫、遺構の氷碑群を巡り、声を操る不正と陰謀の痕跡を追う。制度化と倫理、真実の公開と人の記憶という相反する選択のあいだで揺れる主人公の葛藤と、氷と硝子が織りなす冷ややかな美術描写が読みどころ。謎めいた硝子片と“忘却”の語が示す根源をめぐる探索が物語を引っ張る。