異世界転生影縫師の護衛騎士

異世界転生影縫師の護衛騎士 第29話「巻末特別章」

針先が木の机に突き当たり、薄い音が一つだけ鳴った。セイは息を吐いて、裂けた襟を押さえる左手に力を込める。昼下がりの光は小さな工房の窓枠を斜めに切り、埃が金粉のように舞う。目の端に映る自分の影はもう、昔の輪郭を保っていなかった。肩に沿った輪郭が淡く滲み、足元の黒はあちこち薄紙のように透けている。

針先が木の机に突き当たり、薄い音が一つだけ鳴った。セイは息を吐いて、裂けた襟を押さえる左手に力を込める。昼下がりの光は小さな工房の窓枠を斜めに切り、埃が金粉のように舞う。目の端に映る自分の影はもう、昔の輪郭を保っていなかった。肩に沿った輪郭が淡く滲み、足元の黒はあちこち薄紙のように透けている。

「今日は来てほしいって言ったのは俺の方だ。どうして来ないんだって、みんな言ってたぞ」

戸口に立ったのはエダ――護衛隊の若き隊長で、短く切った黒髪に似合わない大きな笑顔を浮かべていた。背には訓練用の盾を斜めに背負っている。彼女の声には遠慮がない。セイは針を座布団の縁に押し当てて、笑おうとして口の端を曲げた。

「客人に針仕事を頼むなら、刀は要らないだろう。紹介するなら別だが」

エダは肩越しに工房の中を覗いた。丸いテーブルには布片、ボタン、ミシンの油さし。窓辺の棚には小さな糸巻きが整列している。彼らの背後、薄緑色の布に包まれて、黒糸の指輪が箱の中で静かに揺れているのが見えた。ガラスの仄かな反射で指輪の黒が増し、そこに浮かぶ刻印が古い紋章の断片を覗かせる。

「指輪の展示、午前中にやった。民衆が来るって約束したんだろう?」とエダは言った。「俺たちは盾を持って行く。お前は座っているだけでいい。――それとも、手伝ってくれるか?」

セイの胸に、いつもの手触りが戻る。布を縫うときの落ち着きだ。だが落ち着きは同時に苦みを伴った。針先で縫う布はふつうの作業だが、彼の「縫い」は別だ。彼の能力は、信頼のある相手の影のほつれを縫い、傷ついた動きを一度だけ支える。本来は必要なときの一回限りの救済の手段であり、使うたび自分の影が薄くなる。さらに、相手が嘘をつくと、縫い目は刃になる――彼らはその重さを今日も忘れなかった。

「今日は来てほしいのは、お前が引退式をするためなんかじゃない」とエダは続けた。「お前の話を若手に聞かせたいんだ。合意の儀式の手順、影を守るための段取り。お前がいなくなったら困るって、みんな言ってる」

「いなくなったりしないよ」とセイは素直に言った。嘘ではなかった。いたずらに舞台に立つ気はないが、関わり続けるつもりはある。守る対象――それは路地の小さな共同体であり、面倒を頼んだとき最初に手を差し伸べる人々だ。彼らは今、護衛隊という形で広く力を持ち始め、遠くの町や港町にまで合意の儀式のやり方を教えている。セイはその象徴ではない。だが彼が縫った影は忘れられない。

工房を出ると、日差しが低く粘っていた。道の角には、かつて替え玉にされたと噂された女性が子どもと手をつなぎ、普通の服を着て笑っている。月のない裁判所がかつて恐れられていた塔にある碑文は、今では花で飾られていた。人々は昔ほど行進してはいない。彼らは代わりに、小さなテーブルを並べ、誓いの言葉を書き写す。

訓練場には新しい看板が立っていた。護衛隊――影を裁かない護衛、と、小さく書かれている。看板の脇には、黒糸の指輪が木の台に載せられていた。指輪の周りを囲むのは、過去を忘れないためというより、過去を学ぶためのメモと紙片。一つ一つには名前がある。犠牲者、証言者、帰還者。そのうちの一枚に、ミラの字で「選ぶ権利」とだけ書かれているのが見える。ミラは祭壇の後ろで紅茶を注いでいた。王女の身分を名乗らず、市井の一人の女性として生きることを選んだ彼女は、今や共同体の代表として護衛隊の窓口に立つ。

式典が始まる前、若者たちが集まっていた。彼らは鋭い眼差しとぎこちない敬礼で、セイを取り巻く。隊列を率いるのはエダ。横で説明をするのは、公的に護衛隊の規則をまとめた学者のソレンだ。ソレンは薄いメガネの奥で、興奮を抑えきれずに紙束を震わせている。

「まずは手順の確認だ」とソレンが言う。「合意の儀式は三段階――事前の真実確認、共有の誓約、最終的な解除。この三つが揃わない限り、縫いは行わない。嘘があれば刃になる。誰が嘘をついたか、どの言葉が偽りか、これを見抜くのは皆の仕事だ」

若手の一人――名をヒヨルと言った――が前に出て、ぎこちなく手を挙げる。「でも、先生。もし現場で急に嘘だと分かったらどうするんですか? その時点で縫い目が刃になったら――」

セイはそこで口を開いた。彼は何十年も前に、刃となった縫い目が仲間の背を切り抜けるのを見たことを、声を抑えて思い出す。だが彼は若者の目を見るだけで決めたことがある。

「嘘があったと分かったら、縫いは中断する。無理に完成させない。縫いは一度だけの救済だが、その一度が人を傷つけるなら意味がない。合意の儀式は、皆で止めることをできるように作られている」

エダが頷いた。「だから訓練で合意の止め方を教えているんだ。声を出す合図、手を引く合図、三人が同時に認めないと次に進めない。縫うのは最後の手段として残す。それがこの隊のやり方だ」

式典が終わる直前、遠くの通りで子どもの叫び声がした。小さな群衆が一斉に振り向く。声は工房近くの裏道から来ていた。駆け出すと、細い男が倒れている。男の膝は裂け、動けずにいる。近くに立つのは年老いた旅人とその孫。旅人の目は血走っている。彼は低く、切羽詰まった声で言った。

「我々は港から戻ったところだ。税関で押し問答があった。あの子が代わりの身分だと――町役人が命じたんだ。逃げる際に、彼が転んだ。動けぬ。だが、――我々はもう長くは歩けぬ」

若者たちの顔が一斉に形を失う。過去に戻る足音が村の中で響くのを、誰も望まなかった。セイの体が反応し、胸の奥が引き締まる。縫いたい、まっすぐに。彼は横たわる男の影のほつれを見た。影の裂け目が小さく震えている。――だが見ると同時に、嘘の可能性を考える頭が働く。旅人の言葉がすべて真実だとは限らない。旅人が何かを隠している可能性はないか。嘘が練り込まれていれば、縫い目は刃に変わる。

セイは膝を折って人々と同じ目線になり、旅人の顔を見た。老人の手は震え、唇は乾いている。孫は仰向けに息をしている。エダが隣で盾を下ろし、静かに尋ねた。

「ここに来るまでに、誰かと約束しましたか。誰かからの命令、誰かに代わりにやるよう強制されましたか?」

老人は俯いて、声をこぼした。「――我々は代わりの証明書を持っている。だが、税吏は言った。書類ではない、影が――」老人の目から涙が溢れた。「子どもは違うと言った。しかし我々は逃げるほどの力がない」

そのとき、セイは知覚した。老人が嘘をついているとは感じなかった。むしろ、真実が半分しか語られていることを嗅ぎ取る。ヒヨルの手が震えていた。若者たちは動揺している。合意の儀式を施すには、全員の言葉が真実でなければならない。今の場は混乱していて、誰も真実を検証する余裕がない。だが放っておけば、男はそのまま動けなくなるかもしれない。

エダが低く言った。「応急処置はできる。支え合えば動かせるだろう。誰が彼を背負える?」

十人ほどが手を挙げた。セイは一瞬、針箱に手を伸ばした。細い光沢の糸が彼の指先に触れた。影を縫えば動きを支えられる。だが代償は必ずある。彼はすぐに、それをどう使うかを選んだ。ここで彼が一人で何度も救うことを繰り返せば、影は消える。だが彼が完全に身を