月蝕校正士と忘れられた神託
月光が欠けた文字を照らすとき、校正は記憶と引き換えの行為になる。
あらすじ
三十年の校正者としての記憶を持つ者の意識が、十五歳の少年リオネルの身体に宿った。月光の下でのみ「欠けた活字」を読み取り、改竄を正す能力――だが文字を直すたびに記憶が削られるという代償があった。王都では王女セレネが神託の原文を民に公開しようと動き、リオネルは写本と群衆の声の間で、誰の記憶を守るかを迫られる。青い蝋印の写本、運河に浮かぶ銀の文字、鐘楼の三打ち──月と文字が交差する夜の場面描写と、記憶の喪失をはらんだ道徳的選択が読みどころの物語。